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初瀬斎宮旧跡伝承地と小夫天神社(桜井市) 斎王の面影求めて

 名阪国道福住インターを下りて桜井市の市街地へ向かう道すがら、右手に「倭笠縫邑 泊瀬斎宮 旧跡伝承地」という石碑を目にして、もう遠い記憶だが、卒業論文に「斎王」を選んだことを思い出した。

 

 斎王とは、天皇に代わって伊勢神宮の祭神・天照大神に使えるために選ばれた未婚の内親王のことで、制度上初代斎王は天武天皇の皇女・大来皇女(おおくのひめみこ)と言われている。

 

 斎王が伊勢神宮へ向かう旅は「群行(ぐんこう)」と呼ばれ、その途中では身を清めるための「禊(みそぎ)」が執り行われた。「斎宮(さいぐう・いつきのみや)」は、斎王の宮殿があったところとされ、大来皇女は斎王に選ばれた後、初瀬斎宮に入り、禊潔斎して伊勢神宮に向かったという。

 

 石碑のある場所は、桜井市小夫(おおぶ)。桜井駅から車でおよそ30分の山に囲まれた地域だ。今からおよそ1300年前、一人の皇女がこの山間の地で身を清めていたかもしれないと想像するだけで、不思議な気持ちになる。今のように自動車や電気、通信機器もない時代。官人や女官と共に都を離れた彼女は、故郷のことを思っていたのだろうか、それとも神に仕えるという使命感にあふれていたのか。

 

 石碑から少し坂を上ると、斎宮山のふもとに小夫天神社がある。社伝と書かれた石碑には、小夫天神社に天照皇太神宮鎮座は崇神天皇即位6年秋9月23日とある。中殿には天照大神と大来皇女命、東殿に天児屋根命と品陀別命(応神天皇)、西殿に菅原道真を祭神としている。柏手の音が静かな境内に響く。

 

 初瀬斎宮の場所は所在不明とされているが、近年大型の建物跡が見つかった脇本遺跡(桜井市脇本)が最も有力であるとされている。国道165号沿いにあり、前には初瀬川が流れ、伊勢に向かうルートとしてもこの場所であった可能性は高いだろうが、実際のところは誰にも分からない。

 小夫天神社境内には、樹齢1500年といわれるケヤキの巨樹がある。もしかすると彼女の姿を見ていたのではと思い、「大来皇女はどんな女性だった?」と心の声でたずねてみた。 (千)

アクセスマップ

地図

小夫天神社

桜井市小夫(名阪国道福住インターより車で約15分)

 

※このページの内容は2022年1月7日現在のものです。

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