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町家物語館(大和郡山市) 遊郭から下宿屋へ 昭和初期の文化を伝え

 歌舞伎や文楽の「義経千本桜」ゆかりの源九郎稲荷神社の参道から細い路地を曲がると、木の格子が一面に張られた3階建ての「町家物語館」があった。

 

 ここ、洞泉寺町にはかつて花街があったという。この建物は大正末期に建てられた遊郭で、昭和33年まで営業を行い、その後は客間を下宿として貸し出していた。その後、空き家となっていた貴重な建築物を遺そうと、大和郡山市が買い取ったという。平成26年には登録有形文化財に指定され、耐震工事などを終えて一昨年から一般公開しているそうだ。

 

 そんな説明を、同館スタッフの女性が館内を案内しながら話してくれた。まず案内してもらったのは娼妓溜(しょうぎだまり)という部屋。1階の格子は目が詰まっていて、外から中を見ることはできない。格子は各階ごとに間隔が異なり、3階の方が隙間が空いている。これもこの建物の特徴だという。階段を上ると左手に見えるハート型の窓は「猪目窓」といい、SNS映えすると若い女性にも人気だそうだ。遊女たちもこの窓を見て「かわいい」という感想を持ったのだろうか。

 

 客間は下宿時代に貸し出されていた部屋だ。昭和40年代の新聞が張られていたり、NHKの放送受信証が張られているなど生活感も残っている。

 

 2階から3階には横幅2m近くありそうな大階段がある。春にはこの大階段にひな飾りが飾られるそうだ。1階に戻ると、中庭を挟んで家主の住まいである座敷もあり、見学できる。凝った意匠の欄干や床の間なども見ごたえがある。

 

 「負の歴史という側面もありますが、歴史的事実として伝えていきたい」と話すのは大和郡山市地域振興課の山地晋さん。遊郭だった建物が常時一般公開されているのは全国的にも珍しいそうだ。

 

 平成も終わり昭和はさらに遠くなった。しかし歴史と呼んでしまうには、生々しさも感じる。遊郭という特異な世界を垣間見て、当時に思いをはせた。(久)

アクセスマップ

地図

町家物語館

大和郡山市洞泉寺町10番地

TEL:0743・52・8008

※このページの内容は2020年2月21日現在のものです。

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