転轄門から東大寺に至る道は、学生時代によく散歩した道である。30年も前のこと…。この近くに間借りしていた私は、早朝や夕暮れ静かなこの道を歩くのが好きだった。 深まりゆく秋の一日、暖かい陽ざしに誘われて、なつかしい道を歩いてみた。座って読書にふけっていた池のほとりは、今紅葉まっさかりである。鮮やかに色づいたイチョウやナンキンハゼの葉が風に揺れ、その向こうには大仏殿の屋根、そして澄みきった青い空…まさに絵ハガキにぴったりおさまる光景だ。 私の心に残るセピア色になった道―あのころはゆったり時が流れていたな―そんなことを考えながら歩いていたら、車イスのお年寄りに笑顔で語りかけている人とすれ違った。 のどかなやさしい風が吹く昼下がりのひとときであった。 |
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広陵町 山野菜穂子 |
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