私のすてきな奈良の道
『道-私のすてきな道』
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 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道

佐保路へのプロローグ
 白壁のくぐり戸を通って庭に足を踏み入れる…と一本の紅葉の木が私を迎え入れてくれた。なんだか自分一人のためにあるかのような錯覚にさせられた。ひとときをぼんやり過ごし、ひっそりと静まり返った週日の午後のきままな散歩路である。
  ふと視線をあげると、大仏殿の屋根の一角とこれも金色に柿の実をたわわにつけた一枝が、青い空に一段と美しくマッチしているのが見えた。
  手前向こうから人力車が来た。通りすがり「こんにちは」という若い車夫の明るい声…。その声ではっと我に返り思わずうわずった声で返事をした。
  吉城園、依水園で紅葉を堪能して、大仏殿の方へ歩を進めた。水門町あたりでゆっくりと時間をかけて歩いた。手前には石段がぼんやりと見える。吉城川のせせらぎだけが耳に入る。
  親子の鹿が2頭、色づいた木々の下で草を食んでいた。次の路を左折していくと、川辺で木の葉をゆっくり川面に浮かべてせせらぎが流れていた。午後の奈良ならではの散歩であった。

奈良市 磯部桂子
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