私のすてきな奈良の道
『道-私のすてきな道』
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 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道

  年に一度だけ、桜の咲くころにこの道を訪れる。
  津風呂川が湖に注ぎ込む辺り、堤に沿って桜の古木が立ち並ぶ。樹齢百年はあるという大銀杏を見上げてから、地蔵橋を渡る。ここから下流の入野橋まで、桜の下をゆっくり歩く。
  魚の姿が見えるほど澄んでいた流れが、道の左手にカーブすると、急に緑色によどみ、湖の気配が濃くなる。釣り人が桜の花びらの散る水面に釣り糸を垂れている。
  右手は畑、その向こうに民家、奥には裏山。そこで鳴くのだろうか。鶯のまだつたない鳴き声。川と集落と桜並木が一つに溶け合った景色の中を歩く。
  吉野の花の華麗さはない。又兵衛桜の豪放さもない。でも、心地よい懐かしさに包まれる。私のささやかな桜狩りの道。

宇陀郡 関本進
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