道からはじまるストーリー

第29話 「この道とこれからもずっと」

2006.06.16

  学園前駅南側から赤膚山へのバス道は、学園南3丁目まで下り、西郊住宅前まで一気に登りつめて、あとは学園大和町まで少し登り下りを繰り返して、奈良国際ゴルフ場を過ぎると一気に下る。

 単身赴任で3人の子どもの学生時代を15年近く家族と離れて過ごした私は、この道を懐かしくもあるが、今つくづく道の変化に自分の年齢を重ねている。

 想えば―。
  長い道程を、わき目もふらずに歩んできた甲斐あって、69歳まで上場企業で勤めることができた。しかし、サラリーマン生活では絶頂期もあったが、大きな波の時代もあって身も心もくたびれ、ふっと立ち止まって思い出すものがある。

 通り過ぎてきた道程には善意もあれば悪意もあった。世間は時として絶頂期に水を注す。悪意をむき出しにして襲いかかってきたのが「不況」という二文字に隠された人減らし作戦で辛かった。解雇されていく社員にどう理由を説明してよいのかわからない立場に、金曜日の夜、最終便でひとときの休息を求めての帰宅も、あえてタクシーには乗らず、月曜日にどう返事するかを考えながら、この道をひとり歩いたものだ。

 渡る世間に鬼ばかりではない。唯一救いの手を差し伸べてくれた老教授に勇気づけられて、今は自分を取り戻している。振り向き通り過ぎた人生=道程に想いをはせると、今年7月で70歳を迎える。

 もうこの道を、あの社員を苦しめた対策など考えずに歩めることができる。それだけでわくわくする。

 これからはこの道の登り下りが体力の下降とともに苦しくなるかもしれないが、なぁに季節の花に目をやり、大好きなビリー・ジョエルを耳にはさんで歩けば大丈夫だ。

奈良市 元島満義 69歳

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 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道





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