道からはじまるストーリー

第65話 「ひだまりの散歩道」

2007.03.16

 大神神社に続く道。嫁さんと自転車を並んで走らせる。天気も良く日が照ると春のような陽気に風を切る頬も心地よい。

 初瀬川に架かる橋を渡るあたりから車の交通量も減り、町の静けさが増していく。すぐ右手には山が迫る。

 去年の春過ぎに引っ越してきたのでまだ見たことはないけど、春の桜はさぞかし鮮やかなんだろう、と密かな期待を抱いている。

 裸の寒そうな桜の木を見かけるたびにそんな春への想いを枝先のつぼみのように膨らましてしまう。それくらい冬とは思えないような暖かさ。

 今日の目当ては大神神社ではなくその手前にある神社。初えびすをやっているらしいので行ってみようということになった。

 その神社は想像していたよりも小さかった。振舞われていた甘酒で自転車をこいで乾いた喉を潤わせた。身体もぽかぽか。

 屋台で買ったお好み焼き。天気も良いことだし、来た道の途中の川原で食べることに。川原にはおあつらえ向きのベンチがある。

 ちょっと質素ではあるけれど、ピクニック気分。川べりということもあり、日が陰るとさすがに寒かったりもする。

 ごみごみとした都会よりも自然がたくさんあるこんな町。越してきたこの町は二人のお気に入り。

 結婚して3年。振り返ると常に嫁さんに支えられてきたと思う。こんな他愛もないことを一緒に楽しくやれる。それが何より。

 「この人との幸せは、きっと、高級ホテルで食べる豪華なディナーなんかじゃなく、こうやって川原で食べるお好み焼きなんだ」
  そんなことを思った。

 雲に隠れていた日がのぞきだすと、また春のような暖かさを全身に感じた。

桜井市 田中憲明 32歳

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