道からはじまるストーリー

第67話 「吉野神宮から蔵王堂までの道」

2007.03.30

 桜の季節には人、人、人でゆっくりまわりの景色を楽しみながら歩けないこの道。

 65年前、吉野神宮で結婚式を挙げた母によると、そのころは地道で木々もうっそうと生い茂っていたという。

 今は86歳の母の車椅子を押して、ゆっくりまわりの景色を楽しみ、途中おみやげ店に立ち寄り、蔵王堂までたどり着く。

 母が大好きなこの道。
  特に蔵王堂山門のカーブのところから左側に見下す景色が最高だ。如意輪寺が見え、その周りの四季の木々の移り変わり。
  ここまでゆっくりゆっくり一時間余りかけてくる。

 車で蔵王堂まで来ると、途中の楽しみが消えると母。そこでいつも吉野神宮に参拝して、そこに車を置いて歩く。

 65年間毎日欠かさず訪れている母。27年前、私に息子が誕生したころは、母が乳母車を押して、途中、道に落ちている木々の葉を拾っては息子と楽しく過ごしていた。

 そして今は、母の車椅子をゆるやかな坂やカーブを少し息切れしながら私が押して、途中の景色を説明しながらきれいに紅葉した葉っぱを拾っては母に手渡す。

 春、夏、秋、冬の中で、この道をゆっくり歩くのは春と秋。夏と冬は車で通り過ぎる。でも、母にとっては次くる季節はまた、車椅子でゆっくり楽しめるという気持ちで窓の外をじっと眺めている。

 この道は、母にとって、父との思い出の道でもあり、娘の私と、そして孫との楽しい時の流れを感じた道でもある。

大和高田市 伊東知佐子 58歳

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 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道





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