道からはじまるストーリー

第69話 「これからも続く道」

2007.04.20

  「お住居はどちら?」
  「橿原神宮です。明日香も近いんですよ」
  それだけで、皆さんが「羨ましい」と言ってくれる。毎朝、神宮の森を散歩すると言えば、羨望を越えて嫉妬される。

 私にとって、日本一の散歩道。現実を離れ、森の妖精にでもなったかと錯覚しそうなひととき…

 二年前、思いもかけぬ入院、手術によって、一年間この道を歩くことができなかった。長く辛い闘病生活の間も、もう一度この道を歩く自分の姿をイメージして頑張った。

 木々や小鳥たちは、私を見守ってくれているし、再発の恐怖が頭を離れなくても、自然の大きな腕の中で生かされている自分を感じることができる。

 毎朝、同じ場所ですれ違うご夫妻。挨拶を交わすようになったのは、いつごろだったかしら。
  最初、奥様は帽子、手袋、長袖、日傘と、完全日焼け予防スタイルで、青白い顔をしたご主人の後を、追い立てるかのように険しい顔をして歩いていらっしゃったっけ。
  それがいつの間にか、おしゃれなジャージの上下に、足元は本格的ウオーキングシューズ。ご主人と横並びになり、どうかすると颯爽と前を歩いておられる。この道にはまった人が、また1人増えたと思うと面白かった。

 今、散歩中、一番気になる男性、まだ五十代とお見受けするが、不自由な左足をひきずり、杖をたよりにゆっくりゆっくりリハビリ歩行をしておられる。
  うつむき加減の姿がいたいたしく、横を抜いていく自分が申し訳なくて、毎朝挨拶をしそびれてしまう。でも、心の中でつぶやいている。

 「あきらめないでくださいね。私、ずっと応援していますから」。

 もう少ししたら、きっと大きな声で挨拶します。顔を上げてください。一緒に空を見上げましょう。私たち、この道に守られている仲間ですもの…。

橿原市 坂田洋子 62歳

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 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道





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