道からはじまるストーリー

第73話 「桜のつぎには」

2007.05.25

 休みになると、娘を連れてよく大中公園へ出かける。大きな道路と高田川で隔てられたこの道は、桜並木になっていてきれいに整えられており、絶好のサイクリングコースとなる。

 桜の名所としてよく知られており、今年も見事な桜が川沿いに一斉に咲き乱れ、多くの人の心を和ませたことだろう。

 桜の季節が過ぎるころに大和高田市立病院の真横のこのコースを通ると、いつも思い出すことがある。

 娘はこの病院で産まれた。早産で未熟児のため、私が産後退院しても、一緒に退院することができなかった。

 早く大きくなることを願って、毎日母乳をしぼり、冷凍パックにして病院に届けた。満開の桜並木も、眺める余裕なんてなかった。

 ピンクに色づいた桜が、やがて緑色に変わるころ、やっと娘の退院を告げられた。

 その帰り道、ようやく桜並木を見上げることができた。新緑がとてもまぶしく、輝いて見えた。川からの風がとても優しかった。

 そんな娘も、幼稚園ではクラスで2番目に大きくて、私の自転車の後ろに乗せると公園までの道のりがやけに長く感じるようになった。

 そして、今日もまた大中公園へ向かう。娘はこの春、小学校に入学した。

 先生は、優しい女の先生で、仲良しの友達とも同じクラスになれたと、とても喜んでいる。

 私の自転車の前を、真新しい自転車で、娘が走っていく。いつもより軽やかになった自転車をこぎながら、大きくなった娘の後姿と、新緑へと変わり始めた木々を見て、またこの大好きな季節がめぐってくる喜びをかみしめた。


大和高田市 中本るみ子 34歳

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