道からはじまるストーリー

第82話 「もう一度、あの道を」

2007.07.27

 発車しかけのバスに飛び乗った。毎朝、私は最寄の駅までバスで通勤している。
  窓際に座り、景色を眺めることが私の1日のエネルギー源かもしれない。

 バスとは逆方向に大学生が楽しそうに話しながら歩いている。帝塚山住宅から東生駒駅までのたった15分間だけ、私は昔にタイムスリップする。

 高校生の私が制服姿で歩いていた。それほど太ってもいないのに、ダイエットのため、片道40分の道のりを食事を減らし無我夢中で、行き帰り、毎日歩いた。その道は、3年間とても苦痛だった。

 大阪の大学に入ってからは駅までスクーターで通っていた。大学2年の春、初めて好きな人が出来た。その人は東生駒周辺を車で仕事をしていた。その人に会いたくて、私は再び、駅まで歩き始めた。あの苦い思い出しかないあの道を。

 一瞬のすれ違いでもいいから会いたかった。起きるのが楽しみで今までより早く家を出た。

 大学前の登り坂を越えると生駒が一望できる下り坂になる。ふと立ち止まって、なんてすてきなんだろうと思った。

 春は桜並木がずっと続く道。風で桜の花びらがヒラヒラと散る中を歩く。このころ、前だけを見ていた。いろいろなことへの希望に満ちていた。歩くだけで気持ちが大きくなれた。悩みや不安がちっぽけに思えた。

 秋には一面、紅葉の横を歩く。冬には雪化粧した景色を見て歩き、体がポカポカして駅に着くと、冷たい風が気持ちよかった。

 高校のころ、私はこの桜を見たのだろうか。タンポポなどの足元に咲く草花のかわいらしさに気づいていただろうか。

 最近、私はヒールのない靴を探している。
  30歳を過ぎた今、もう一度この道を歩くと、どんな景色に出会えるだろうか。


奈良市 和多田裕美 30歳

写真

前の記事へ 一覧表ページへ戻る 次の記事へ
『道-私のすてきな道』
好評発売中!

 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道




Web版リビングダイヤル 【 引き受けます 】  パソコンの事なら何でもOK 広告掲載案内

車検で迷っているなら!ホッとリーズナブルな車検 ホリデー車検

トップページ会社概要広告の掲載事業紹介ご利用の注意事項サイトマップお問合せ


当ホームページが提供する情報・画像を、権利者の許可なく複製、転用、販売することを固く禁じます。