道からはじまるストーリー

第87話 「さぁ、今日も」

2007.09.07

  「さあ、今日も頑張ろう」
  買い物に行くだけなのに今日も私は玄関で気合いをいれる。

 この高台のマンションに引っ越してきて早3カ月。思い返せばこの地を選ぶかどうか悩んだ一番の理由はこの坂道だった。

 生駒駅から宝山寺に向かうケーブル沿いの坂道。車の運転が苦手な私のもっぱらの移動手段は歩くこと。
  車の往来も多く、狭くてガタガタした歩道。けれど自然の多さ、日当たりの良さ、眺めの良さ、風の気持ち良さにひかれこの地に住むことを決心した。

 朝の比較的涼しい時間に1歳10カ月の息子をベビーカーに乗せ出発する。帽子にスニーカー、日焼け止めは必需品。日差しは暑いが吹き下ろす風に背中を押され私は買い物に向かう。

 時折通るケーブルカーの「ミケ」と「ブル」。息子はベビーカーから身を乗り出して満面の笑みで「ワンワン」「ニャンニャン」と指を指す。

 買い物も帰りの坂道を考えてカゴの重さを無意識に量る。そしていざ自宅へ。
  「ジージー」と大声で鳴く蝉に負けずに私の息づかいも荒くなる。

 ベビーカーの息子は早くケーブルカーが通らないかとワクワクしながら道端の草花や空を飛ぶ鳥に歓声をあげる。

 来月私は二人目の子を出産する。ベビーカーを押して、時には息子と手をつないで歩いたこの道を、今度は3人で歩くことになる。

 息子がこのベビーカーを独占できるのもあと少し。赤ちゃんにベビーカーをとられ、時にはこの坂道で「だっこして。ぼくもベビーカーに乗せて」とだだをこねることもあるだろう。

 そんなときどうやってなだめようか、そんなことを考えながら、あと少しこの道を息子と2人で歩くことを楽しみたいと思う。


生駒市 角田瑞希 30歳

写真

前の記事へ 一覧表ページへ戻る 次の記事へ
『道-私のすてきな道』
好評発売中!

 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道




Web版リビングダイヤル 【 お知らせ 】  ピアノ買取 リサイクル 広告掲載案内

車検で迷っているなら!ホッとリーズナブルな車検 ホリデー車検

トップページ会社概要広告の掲載事業紹介ご利用の注意事項サイトマップお問合せ


当ホームページが提供する情報・画像を、権利者の許可なく複製、転用、販売することを固く禁じます。