|
我が家にダウン症の「一輝」が誕生したとき、家族は戸惑った。
白い弱弱しい体、でも大きな黒い瞳は、はっきり家族の心をとらえた。
1歳半で心臓の手術を受けるまで、息子たち夫婦に気の休まる日はなかったと思う。手術を終えてから少しづつ元気が出てきた。
まず歩くこと。先生や親の心配をよそに家の前の山田道。県道より下の山田川に沿った2m幅ほどの農道を、実に根気よく歩いた。
やがて、自由に雄たけびを上げて歩き、走るようになったとき、「良かった。歩けるぞ」と確信できた。
補助輪付きの自転車も加わり、道の両側の田畑の移り変わり、川の流れの優しさ、草花や鳥たちのささやきすべて一輝の友達。
何より自由に気持ちの許せるいにしえの山田道が、一輝の原動力となってくれた。
そして弟も生まれ、姉と兄弟3人で歌を歌いながら、トンボ、チョウ、カエルを追いかけながら、けんかして泣き泣き、花を摘みながら、孫たちの成長のすべてを見ている山田道。
いいえ、この道は、はるか昔お伊勢参りの通り道。人々の祈りを運んだ道。
一輝も道に守られ、成長は遅くとも元気いっぱい明るく歩み続けている。
10歳を迎えた一輝は、補助輪なしの自転車がほしいのだろうが与えられない。どこまでも走っていきそうな子なのだ。
でも、この先も、いにしえの山田道は、一輝の友達、一輝を見守り続けてくれると信じている。
|