|
遠い遠い昔、記憶も定かではないほどの遠い昔の思い出だ。
三人姉弟の真ん中の長男が幼稚園に入園して間もなくのころだった。
その頃、幼稚園は阪奈道路の下をくぐり抜けて、大人の足でも家からは20分以上もかかるところだった。当時は車の数も少なく、今のように物騒な事件もなかった。田園風景の中、子どもたちはのんびり通園していた。
ある朝、受け持ちのY先生から「雅人君が園にいません。お家に帰ったのかもしれません。注意してあげてください」と電話が入った。
生まれて初めて親の下を離れて心細かったのだろうか。あわてて次男を自転車に乗せて園に向かった。
しばらく走ると、前方の阪奈道路の下を上靴をはいたままの彼が必死になって帰ってくる姿が目に入った。
心配でたまらなかった気持ちが思わず「どうして帰ってくるの」とどなりつけてしまった。
自転車を押して、彼を園まで連れて行ったときには、どっと疲れが出てしまった。
今から思えば三人姉弟の真ん中の彼にはほとんど手をかけてやることがなかった。また、手のかからない子だった。
ただ、最初のころは幼稚園へ行くのを嫌がっていた。しかしよくしたもので、そのうちにお友達もでき、園にもなれて楽しく通園してくれた。
今現在、その阪奈道路も第二阪奈ができ、高架工事がすすみ住宅も自動車も増えてそのころの風景は様変わりしている。
幼稚園、小学校も近くにできて、子どもたちは阪奈道路の下をくぐり抜けて通園することもなくなった。
しかし、その道路を見るたびに必死になって帰ってきた長男を思い出す。姉弟の中で一番独立心が強く、今は遠い千葉県で家庭を持って過ごしている。ほろ苦く、懐かしい阪奈道路だ。
|