道からはじまるストーリー

第106話 「ふるさとの道」

2008.02.01

 「行基さんの向いてはる方向に東大寺があるんです。大仏造営に力を尽くされた行基さんは、今でもずっとこうして奈良の平和を願ってはるんですよ」

 いつだったか、近鉄奈良駅の噴水前で、そうボランティアガイドの方が教えてくれた。

 へぇ〜、知らなかった。生まれたときから奈良で育ち、幼稚園の遠足で公式奈良公園デビューをはたした私だが、幾度歩いても新たな感動がある奈良公園を散歩するのが大好きだ。

 先日、結婚して静岡に住んでいる友達が久しぶりに里帰りをしてきた。
  あまりゆっくりできないとのことだったが、それならなおさら一緒に行きたいところがあった。
  もちろん奈良公園だ。

 行基さんに見送られながら、ゆっくりと坂を上り、めざすは二月堂。折りしも修学旅行シーズン真っただ中。さまざまな制服の学生達がにぎやかに鹿とたわむれている様子を横目で見ながら、南大門をくぐるころには、私たちもすっかり学生時代に戻り、夢の中で話に興じていた。

 思い出話から始まって、知らない土地でとまどったこと、慣れない家事のこと、仕事のこと、そしてちょっぴり旦那さんの愚痴話。そんなたわいもない会話の間に、ふっと友達がもらした一言「やっぱり、奈良はいいなぁ」

 大学を卒業して、もうすぐ10年。
  結婚や就職でたくさんんの友達が奈良から離れていった。地元から飛び立つ勇気も羽も持ち合わせていなかった私は、次々と大空に飛び立っていくみんなをずっとうらやましく思ってきた。
  けれども、本当はみんな住み慣れたふるさとを離れて、不安と戦いながら一生懸命頑張っているのだなぁ。

 行基さんのように、とはいかないけれど、私もどっしりと落ち着いて、私なりの人生をしっかり歩いていかなければ。
  二月堂から夕日を眺めながら、そう心に誓った。


奈良市 田中順子 31歳

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 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道





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