道からはじまるストーリー

第109話 「私と子どもの歩む道」

2008.02.22

 「雪が積もったら雪合戦したい!かまくらも作る!」無邪気に子ども達がそう言う。
 「そんなに降ったらいいね」と相槌を打ちながら、私も雪が降ったら、ぜひ歩いてみたいと思うあの道に、思いを馳せる。

 県庁東交差点から続く南の道。奈良に嫁ぎ、現在小学1年、3歳、0歳の3人の男の子に恵まれ、騒々しくも平凡に生活している私にとって、この8年の来し方は、この道なくしては語れない。

 長男妊娠中に経験したひと月の入院。まだ奈良に友人と呼べるような人もいない私を、主人は仕事が終わると毎日この道を通り、見舞いに来てくれた。

 次男妊娠のときは、入院は免れたものの、万が一という不安があり、検診の度、緊張で胸が締め付けられるような思いで通ったこの道。

 しかしいつ頃からであろう。その道に差し掛かると、その凝り固まったような気持ちがほぐれていくようになった。

 道の両側でやわらかな朝の光を受けて、草をはむ鹿たち。春日大社に続く参道の鳥居を越え、坂を下ると見えてくるなだらかな丘。池のほとりにまるで西洋のお城のようにたたずむ奈良ホテル。
  そこに差しかかると、まるでその池のほとりを逍遥しているかのような落ち着いた気分になれるのであった。

 しかし三男妊娠で再び、ひと月の入院を余儀なくされた私。幼い子ども2人は、まだ家に帰ることのできない私を見舞った後、どんな気持ちであの道を通ったのだろう。
  その時の私は、子どもたちも、あの道、あの風景に少しでも癒されていることを願うことしかできなかった。

 家族みんなの思いが交錯したこの道。しかしこの道とこの風景がある限り、我が子が元気に産まれ、成長していくことをひたすら願ったそのときの気持ちを忘れることはないだろう。


奈良市 松井典子 32歳

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 地上にはもともと道はなかった。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。
 この魯迅の『故郷』の中の言葉がエッセイ「私のすてきな道」のスタートでした・・・・・

わたしのすてきな奈良の道





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