特集
世界遺産の地 吉野・大峯味めぐり

 この夏、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されました。1300年前に修験道が誕生した地であり、多くの修験者が今も山に入り修行を行っています。この山と渓谷に囲まれた地で、古来人々は土地の産物を使い、さまざまな特産品を作り出してきました。古くから伝わるもの、また新しく作られたものもあります。今回はそんな吉野地方の特産品を紹介します。
下北山村独自の味わい 「春まな漬け」
photo 下北山村は国道169号線を南下し、大台ケ原も越えた地、西に大峰山脈を望む地にあります。前鬼川という歴史を感じさせる名前の川が流れ、役行者に仕えた前鬼後鬼の子孫が住んだと言われる集落が、その上流にあります。
 この下北山村で作られているのが春まな漬けです。昔から下北山村で作られていましたが、特産品として定着させようと15年ほど前から商工会婦人会が中心となって製品化してきました。
 そのマナ漬け作りのリーダーをしている日浦マサさん(70)は「下北山のマナはここでしか取れない味」と話します。下北山村は冬に寒く冷え込むため、葉がしまりまろやかな味になるそうです。そのマナを、2・3月の寒さの一番厳しい時期に漬け込みます。味はほろっと苦味と甘みもあり、口当たりが良いといいます。また、寒さから虫もつかないため自然のまま、無農薬で安心です。
 マナの茎をご飯に混ぜてマナの葉に包むとめはりずしができます。また細かく切ってピラフに混ぜたり、薬味として使ってもおいしいそうです。冷凍保存され、緑色が鮮やかなまま1年中売られています。古くからこの地に伝わる味が大切に守り続けられています。

photo    メ モ
  ●「春まな漬け」
   200g350円 
  ※きなりの湯ほか、村内の土産物店で販売しています。
  ◇下北山村商工会 tel/07468・6・0446

山に囲まれた秘境・十津川 「ゆべし(柚餅子)」
photo 日本一大きい村、十津川村で古くから作られている保存食が「ゆべし」です。弁当のおかずやお茶漬けに欠かせない自然食品で、「田舎のチーズ」とも呼ばれています。
 「十津川に昔からあるものを使って産品を作りたいと思った」と話すのは、ゆべしを作り続ける十津川深瀬の深瀬藤枝さん(73)。十津川村でユズが実り、そばが乾燥しきる10月末から3月という寒い季節にゆべしは作られます。そば粉・もち米粉・かつお節・ラッカセイ・シイタケ・胡麻・大豆・トウガラシ・コンブを特製のミソと混ぜ合わせます。そしてそれをユズの中身をくりぬいたものに詰め込み、2〜3時間蒸した後、寒風にさらして約2カ月乾燥させます。それぐらい時間を掛けないとしんから乾かないそうです。
 「修験者もゆべしを持って山に登ったことでしょう」と深瀬さん。薄く切ってそのままご飯に添えて食べても良いですが、みそ汁やすまし汁に入れてもユズの風味がしておいしく、またキウイやリンゴ、シソの葉やチーズに挟んでもビールやお酒のつまみにぴったりです。

photo    メ モ
  ●「十津川ゆべし」
  1個600円 
  ※道の駅十津川郷やホテル昴、奈良市内でも販売しています。
  ◇「十津川深瀬」 tel/07466・6・0031

吉野山を望むログハウスで 「桜アイスクリーム」
photo 吉野山の駐車場を越え、下千本の桜を見渡すのにちょうどよい位置に、ほかの建物とは少し趣の異なるログハウスの店「陽(ひなた)ぼっこ」が建っています。「木が好き」と話すのは、主人の歌藤彰介さん(54)。ログハウスというと外国のものというイメージがありますが、「紙と木は本来日本のもの」と歌藤さん。
 この店で最も人気があるのが「桜アイスクリーム」です。桜の花びらと葉を粉末にしたものが練り込まれたオリジナルの商品で、色もピンク色というより桜色の名の通りの優しい色です。4月に1年分作るため、年中食べることができます。
 「吉野に新しいものを作りたかった」という歌藤さん。吉野の木材や桜など地元の良いものを見直し、吉野の良さをもっと知ってほしいと話します。そんな思いで、設計からすべて手作りというログハウスからは木の良い香りが漂い、春には桜が、秋には真っ赤な紅葉が楽しめます。


photo    メ モ
  ●「桜アイスクリーム」320円
  ◇ログハウス茶房 陽ぼっこ tel/07463・2・3177(旅館歌藤)
   営業時間・定休日なし

行者の宿が連なる洞川 「名水ごまどうふ」
photo 天川村洞川は大峯山への登山口であり、古くから修験者の宿としてにぎわっている地です。今でも宿や陀羅尼助丸を売る店などが軒を連ね、林間学校の学生や名水を汲みにくる人、温泉に入りにくる人でにぎわいます。
 その旅館街を抜けたところに小屋商店という、名水ごまどうふの店があります。ごまどうふというと高野山が本場ですが、洞川の涼しい気候と大峯山の麓から湧き出る名水で、独自のごまどうふを作っているのが小屋勇子さん(57)です。
 もともと好きだったごまどうふを、精進料理として山上ケ岳に登る人に食べてほしいと、独学で研究しながら作っています。ゴマのエキスもゴマからの手作り。それに吉野葛、名水と本当に吉野の自然のものばかりを使って作ります。ゴマエキスに対する葛の分量など、すべて手探りで「最初は失敗の連続でした」と小屋さん。毎日仕込みから包装まですべて1人で手作業で行うため、体力勝負。「おいしいものを食べてもらうために」と頑張ります。
 「わさびじょうゆで食べるとおいしいですよ」とのこと。洞川という神秘的な地で作られた、ほかにはないオリジナルの味です。


photo    メ モ
  ●「大峰山洞川名水ごまどうふ」1個300円(喫茶用)、
    6個入り1050円(持ち帰り用)
  ◇本店 tel/0747・64・0324
  洞川温泉前店 tel/0747・64・0065
  営業8時30分〜18時(土日曜は19時まで) 不定休

※このページの内容は2004年8月20日現在のものです。










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