特集
大和の秋祭り

 祭りの季節がやってきた―。稲穂が重そうに頭を下げ収穫の時期を迎えると、“秋祭り”の季節がやってきます。各地で古くから行われてきた秋祭りの中で、さまざまな芸能も生まれ、特徴を持った祭りも行われています。今回は、そんな大和の秋祭りを紹介します。

素朴で古風な舞■ 翁 舞 ■
photo 京都との県境にあたる奈良阪町の氏神、奈良豆比古神社の宵宮に古式ゆかしい「翁舞」が行われます。9月21日に「翁講」の中から太夫と脇2人の翁、三番叟(さんばそう)、小学3〜5年生ぐらいの男児が演じる千歳(せんざい)といった演者と笛や鼓の奏者などの役割が決められ、その後一週間、毎晩練習が行われます。神社には能面も伝わっており、普段は国立博物館で保存され祭りの時のみ戻ってきます。
 「三番叟と千歳の問答など面白いですよ」と話す神主の辰巳直三さん(70)は今年の4月に神主になったばかり。今年初めて神主として祭りに関わります。「初めてなので翁講の先輩に教えてもらいながら、伝統を一生懸命守っていきたい」。辰巳さんはそれまでまったく別の仕事をしていたそうですが、70歳で神社に関わる仕事をするようになり、「一から勉強」と祭りを迎える決意を語ります。

メモ
奈良豆比古神社(奈良市奈良阪町)
tel/0742・23・1025
☆「翁舞」は10月8日(金)20時より

若者による神事芸能■ 題目立 ■
photo 都祁村上深川の氏神、八柱神社の宵宮に行われるのが「題目立」という神事芸能です。3つの演目が伝わっていますが、ここ数年は「厳島」のみ演じられています。昔は数え年17歳になった男子が演じていましたが、今は高校1年生が演じます。しかしその年齢の男子だけでは人数がそろわないため、大学生や社会人でも、祭りには地元に戻ってメンバーに加わります。
 ほとんど動きを伴わず、音楽もなく独特の抑揚を持つせりふで進みます。中には舞いや動作を行う役もあり、役が決まると一人一人台本とテープを持ち帰り、独特なせりふ回しを練習するそうです。
 今年は保存会副会長の石橋和弘さん(73)の孫、弘規さん(15)も初めて参加します。代々同じ演目が親から子へ、孫へと受け継がれて祭りを支えています。毎年演者が変わるこのような形態の神事芸能は全国でも珍しいそうです。「ほかにないこの神事芸能を今後も続けていきたい」と保存会会長の乾藏さん(76)は語ります。

メモ
八柱神社(都祁村上深川)
tel/0743・82・0201(都祁村教育委員会)
☆「題目立」は10月12日(火)19時より

「伝統」よりも大切なもの■ 獅子舞 ■
photophoto 「結局は好きなんでしょうね」と話すのは、曽爾村長野奉舞会会長の山本吉修さん(36)。曽爾村門僕(かどふさ)神社の秋祭りで行われる獅子舞は多くのカメラマンたちが訪れる勇壮な祭りです。
 獅子舞は門僕神社の氏子である8つの大字のうち、長野、今井、伊賀見の3大字に伝わっています。獅子舞の種類も、神に奉納する神前の舞いなどの神楽系、剣を持って悪魔を追い払う悪魔払いなど剣系、子どもが演じる天狗や道化も登場する獅子踊り系、そして祭り一番の目玉である接ぎ獅子などいろいろあり、基本的に一つの役割はずっと担当するのが習わしです。
 山本さんは曽爾村の生まれではなく今も住んでいるのは村外ですが、悪魔払いの獅子を10年間舞っています。そして教えてもらった踊りを、今度は教えてもらった人の子どもに教えているそうです。「氏子でなくても受け継いだ伝統をまた村の人に引き継ぐ。それも伝統芸能を続ける上で大切なこと」と山本さん。
 舞い方、踊り方も時代と共に少しずつ変わってきています。形は変わっても、なくしたくないという強い思いがあり、「伝統だから」というわけではなく秋になれば「祭の季節が来た」と自然に思って練習に向かう―。そう話す山本さんからは祭りに対する熱い思いが伝わってきました。

メモ
門僕神社(曽爾村今井)
tel/0745・94・2101(曽爾村教育委員会)
☆「獅子舞」は10月10日(日)8時より(毎年体育の日の前日)

荒々しさの残る■ 火祭り ■
photophoto 生駒山山麓の往馬(いこま)大社では「火祭り」というユニークな秋祭りが行われています。体育の日の前日が例祭。神楽奉納などの神事が行われた後、拝殿から下の広場まで神輿が降りてきて、その前で行事が行われます。
 神事のすべてが競争を伴っていることから「勝負祭り」と呼ばれていたこともあり、今でも地区で南北に別れて競われています。お供えを供える速さや、麦わらで作られた2本の大松明をそれぞれ4人で支え、その上によじのぼってゴゴウシという丸太の端にススキの穂を束ねたものを突き刺す速さ。そして祭りの最後に、「火取り神事」が行われ、それぞれの地域から独身の男性が火取り役に1人選ばれ、燃え盛る松明を肩に担いで石段を駆け下りる速さを競います。
 生駒市はベッドタウンとして、県外から引っ越してきた住民も多くなっています。「新しく来た人にも生駒を古里と思ってもらい、火祭りが古里を代表する祭りと思ってもらえるよう続けたい」と宮司の谷野浩重さん(43)は話します。

メモ
往馬大社(生駒市壱分町)
tel/0743・77・8001
☆「神輿のお渡り・火取り神事」は10月10日(日)15時より(毎年体育の日の前日が例祭)

古い形を伝える■ 水越神社の秋祭り ■
photo 奈良市東部の山間部には古い形を残す祭りが残っています。奈良市の最東端にあたる邑地(おおじ)町の水越神社で行われる秋祭りもその一つです。
 祭りの中心になるのは渡御衆(とぎょしゅう)の12人。年長者から毎年順番に12人選ばれ、数え年40歳の人まで来ると年長者に戻ります。行われるのは笛や太鼓、ベンザラという竹で作った楽器などを演奏し、舞台上で行き違う動作を繰り返す神拝。地謡が加わり舞いを行う翁。互いに手を取って回る儀式的な所作をする相撲の3種類。宵宮には3つとも行われますが、本宮には神拝と相撲のみ行われます。
 「水越神社は立派な神社。同じ形で今後に伝えていきたい」と邑地町自治会長の北良夫さん(67)は話します。

メモ
水越神社(奈良市邑地町)
☆神事芸能は10月9日(土)19時より(毎年体育の日の前々日が宵宮。前日が本宮)


秋には県内各地でいろいろな祭りが行われます。各地の祭りを研究している鹿谷勲さん(52)は「まず、自分の家の近くの秋祭りに行ってみてください」と話します。祭りとは、文化財として残っているものももちろん貴重ですが、日ごろ地域を守る神社をきれいにし、祝詞を上げ、五穀豊穣を感謝する―。その一番大切な意味はどの神社でも同じです。今年は近くの神社の秋祭りに訪れてみてはいかがでしょう。

※このページの内容は2004年9月24日現在のものです。










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