特集
茅葺きの民家の里へ

 秋空の下、日本のふるさとを求め、茅葺き民家を訪ねる旅にでました。茅葺き民家の良さは、なんといっても日本の風土に溶け込んで調和していることではないでしょうか?自然の一部として、違和感なく存在しているのが魅力的。今回、県内で公開されている民家を一部紹介します。落ち着いた、ゆったり静かな空間があなたを出迎えてくれますよ。
国の重要文化財 片岡家住宅
photo 元和5年(1619)から明治の初めまで、庄屋、大庄屋と続いた地主農家。文化13年の造営記録によると、寛文10年(1670)の建築とあります。「棟札や普請帳など建築についての記録がこれほどまでに残っているのは全国的にみても珍しいんですよ」と話す片岡家20代当主、片岡彦左衛門さん(77)。居室の西側に建つ客室は、郡山藩本多氏の休泊の部屋として御殿という名称で記述が残っています。特に、花狭間の欄間は格調高く、美しい限りです。
◆大宇陀町田原938
◆tel/0745・83・2000
◆見学はできますが、必ず事前に電話予約が必要。
◆交通手段・近鉄榛原駅より大宇陀町行き終点下車徒歩50分、または町内循環バス(大宇陀道の駅発)下車徒歩2分

国の重要文化財財 中家住宅(大和棟)
photo 万治2年(1659)頃の建築と推定され、築約350年としています。二重の堀に囲まれた環濠屋敷で、平城城型式をとりいれた武家造りと農家造りを兼ねた民家。
 「堀に囲まれているので、橋板を引けば外からの侵入を防ぐようになっています」と話す中さん。カマドは美しい曲線状に築かれ、11個も並んでいるものが残っているのは大変珍しいです。
◆安堵町窪田133
◆tel/0743・57・2284
◆見学はできますが、必ず事前に電話予約が必要。
◆維持管理協力金500円
◆交通手段・近鉄平端駅よりタクシーまたは徒歩30分、JR法隆寺駅よりタクシー

国の重要文化財 笹岡家住宅
photo 寛永年間(1624〜44)江戸初期の建築。約400年以前のものとは思えないほどしっかりとしたつくり。笹岡家はもと郷士で苗字帯刀を許されたそうですが、天下泰平の世になってからは代々、この地方の大庄屋を勤め、現在まで24代続いています。屋敷の庭は広く、縁側から眺める景色は見飽きることはなく、あっという間に時間が過ぎてゆきます。しっとりと静かな時の流れが家全体に広がります。

◆大宇陀町藤井477
◆tel/0745・82・3711
 (17時以降)
◆見学はできますが、必ず事前に電話予約が必要。
◆維持管理協力金300円
◆交通手段・近鉄榛原駅より菟田野町行きバス宇陀藤井バス停下車徒歩5分

国の重要文化財 旧臼井家(切妻造)
photo 建築年代は明らかではないですが、構造手法上から18世紀前期とみられます。町奉行支配下の半商半農的な町であった高取町植村藩2万5千石の城下町、高取町上土佐(旧土佐町)にあった町屋。臼井家は代々、屋号を「伊勢屋」と称し、藩の公用伝馬の役を務め、酒、しょうゆの販売も行い、大年寄も務めていたとか。民俗博物館主任学芸員の横山浩子さんは「公園内には民家9軒11棟をできる限り、その地にあった環境に近づけ移築復原しています。一度に違うタイプが見れます。ぜひお越しください」と話します。
◆大和郡山市矢田町545県立民俗博物公園内
◆tel/0743・53・3171
◆民家は入館無料 見学時間は9時〜16時
 民家内での写真撮影は事前に民俗博物館窓口で手続きが必要。
◆交通手段・近鉄郡山駅から奈良交通バスターミナル1番のりば「矢田東山」下車北へ徒歩約7分

国の重要文化財 藤田家住宅(大和棟)
photo 元禄年間(1688〜1703)の建築。南と西に高い石垣を築いて構える屋敷で、18代当主、藤田文雄さん(72)が所有。屋敷内に3段の石垣を築いた小山があり、屋敷神(祗園社)を祀(まつ)っています。
 「鎌倉期から戦国期まで武士であった時代は、戦の前には屋敷神に勝利祈願してから出陣したと伝えられています」と話す藤田さん。
 建物は段違いの棟で、主屋の本屋根は切妻造茅葺き、両妻は高塀造り本瓦葺き。高台にあり、まるで山城を思わせます。
◆平群町福貴1523
◆tel/0745・45・0240
◆見学はできますが、必ず事前に電話予約が必要。
◆交通手段・近鉄平群駅より徒歩20分

奈良市指定文化財 旧田中家住宅
photo 江戸時代後期(18世紀末〜19世紀初め)の農家。もともとは奈良市法蓮町にあったものを奈良市が寄付を受け、復元移築しました。現存する「法連づくり」の民家では最古のものといわれています。土間に対して居室を一列に並べ正面に丸太格子(法連格子)を設ける町家風の間取りと構えをしています。また、同じ敷地内に「昔のくらし館」があり、衣食住に関する道具やむかしの農作業(米作り)のようすがわかる道具が展示しています。
◆奈良市五条町204の1
◆見学時間は9時〜17時月曜と祝日は休み(月曜が祝日の場合は翌日が休み)入場無料で見学希望者は隣接の都跡公民館に申し込む。
◆tel/0742・34・1111奈良市教育委員会文化財課
◆交通手段・奈良交通バス「唐招提寺東口前」バス停下車すぐ


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茅葺 国選定保存技術保持者
隅田隆藏さん(大宇陀町在住・78歳)
 隅田隆藏さんは県内の重要文化財住宅などをはじめ、近畿一円を中心に、全国各地で、多くの文化財を手掛けています。万葉集にも出てくる伝統的な逆葺(さかぶき)という技法で茅葺屋根の保存を担っています。
 逆葺とはその名の通り、穂が下向きになる葺き方。これが草葺きの原点です。多くの文化財は、総葺といって、全部新しく葺き、悪くなってくるとその箇所を差し葺といって補修し、また新たに葺く、その繰り返しだといいます。屋根の表・裏、つまり日当たりが良い南側と悪い北側では傷み具合が違うので、どの家も、葺き替える回数が違ってくるとのこと。葺き替えに必要な茅は曽爾高原のものを使用。近年、茅資材が減少してその確保が大変ですが、奈良県は曽爾高原があるので助かっているとか。
 「曽爾高原は、茅葺民家が存続していくうえでは大切な場所。その茅があるからこそ、職人の私は安心して仕事ができるんですよ」と話します。隅田さんの自宅の茅置きにはいつでも対処できるよう、約4000束は常備しているといいます。だいたい葺き替えには2000束ほど使用するそうです。「2000束とは4t車に10杯分です」と話す隅田さん。
 文化財保存技術については、技能者の高齢化により、保存技術の存続が危ぶまれていますが、隅田さんは息子さんとともに親子2代でその技術を継承されています。
 「茅葺民家の魅力はなんといっても、周囲の自然と調和していて、見飽きないとこですかね」と厳しい職人の顔とは別の穏やかな表情で話します。
 大和の茅葺民家を文化財として代々受け継ぐ人、その文化財を技術で守る人。その多くの人の手をかりて、今後も茅葺民家は後世に残っていくことでしょう。






関連リンク
全国重文民家の集い


※このページの内容は2004年11月12日現在のものです。









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