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特集

大和に地醤油あり 夏越しのさなか 天然醸造の蔵巡り


医食同源、万能の調味料として、今や和食だけでなく、あらゆる料理に使用される醤油(しょうゆ)。食欲をそそる色、旨味・塩味・甘味・酸味・苦味の五原味が醸す奥深い味、香りの成分は300種以上といわれています。決して主役になることはありませんが、私たちの食生活に欠かすことの出来ない名黒子としての存在感は語るまでもありません。その醤油を今もなお、じっくりと長期熟成により、個性豊かに育んでいる醤油蔵が、この大和に数多く存在することを知っていましたか。夏越しの最中にある県内各地の諸味蔵(もろみぐら)を訪ね、“地醤油”の魅力を再認識してみました。

橿原市の恒岡醤油。諸味の声が聞こえるという

醸造あっての醤油 27軒の個性を育む

「醤油の味や風味は、原料の質の違いや醸造期間、また、蔵や木桶などに住む微生物、つまり蔵癖などで違ってきます。奈良の醤油は、まさに『醸造あっての醤油』。100年ほど前から今日まで、天然醸造でそれぞれの味をつくり続けてきました」と話すのは、大和の醤油の研究に情熱をもって取り組む『なら食』研究会代表の横井啓子さん(河合町・55歳)。天然醸造とは、季節の温度によって発酵・熟成させる方法で、機械で適温醸造したり、速醸したりしない造り方のこと。

現在、奈良県には27軒の醤油屋がありますが、そのうち13軒は諸味から、14軒は生揚げ(諸味を搾ったもの)から醤油を造っています。生揚げを共同で造ることが多い他府県のそれとは違い、蔵一軒、一軒がその土地の気候風土に合わせ、独自性を出しています。

『なら食』研究会代表
横井啓子さん

時間と微生物の芸術 速醸との違い明らか

発酵食品ゆえ、特に微生物の大切さは、醸造家の誰もが口にします。ニシキ醤油の大方豊さん(50)は「醤油の酵母が何を求めているか、その環境を整えてやることが、私たちの仕事」だと強調。横井さんも、「味には好みがありますが、天然醸造の醤油はまさに時間と微生物が織り成す芸術。速醸との違いは歴然です」と話します。

なじんだ味ゆえ、醤油を今すぐにチェンジすることは難しいかもしれません。しかし、その土地で採れたものをその地で造られた醤油で料理するからこそ、食の地域性も生まれます。近所のスーパーで即購入できるような手軽さはありませんが、まずは奈良の地醤油を知り、味わってみてはいかがでしょう。

Q.しょうゆの原料って何?

主役は大豆(脱脂加工大豆)、小麦、塩。味は主に大豆のたんぱく質から。香りは小麦のでんぷんから、それぞれ微生物の働きによって生まれます。

ニシキ醤油

住所
斑鳩町五百井1-3-10
TEL
フリーダイヤル 0120・2626・88
FAX
0745・75・2628
商品
料亭の技さしみしょうゆ200ml420円、濃口醤油「手造り醤油」900ml399円
取り扱い
店頭販売。イオン系スーパー、イトーヨーカドー、酒店の一部。電話・FAX注文。

創業明治33年。「夏の土用越し醸造は『ニシキ酵母菌』の力を最大限引き出すための醸造方法」と熱く語るのは、社長の大方豊さん(50)。料亭の技さしみしょうゆは、醤油を食塩水の代わりに仕込み水として使い、麹と混ぜて諸味にしているため、濃厚で、刺身とのからみが抜群です。 「醤油の命は風味。劣化しやすいため、空気に触れさせないことが最も大切」というアドバイスも。1カ月ぐらいで使い切るのが理想といいます。

井上本店

住所
奈良市北京終町57
TEL
0742・22・2501
FAX
0742・27・3095
商品
濃口醤油1.8リットル1070円、淡口醤油1.8リットル1070円、濃厚醤油など
取り扱い
店頭販売、近鉄百貨店、近鉄奈良駅売店、酒店の一部ほか。電話・FAX注文。

創業は江戸時代終わり。イゲタ醤油として知られ、国内産丸大豆と小麦を使用、昔通りの原料割合、自然の温度で、2年間の歳月をじっくりとかけて造られています。社長の井上平祐さん(74)は、「醤油の醸造は単に旨味をつくるのが目的ではありません。醸造という微生物の関与は、もっと深い、デリケートなものを含んでおり、それこそが醤油の真のおいしさの源です」と語り、旨味をつくり出すことのみに集中してきた業界に疑問を投げかけます。ジャーナル誌に「醤油に想う」を連載。

レンガ壁が印象的な蔵

片上醤油

住所
御所市森脇329
TEL
フリーダイヤル 0120・06・7833
FAX
0745・66・1933
商品
淡口天然醸造醤油900ml1260円、濃口天然醸造醤油900ml735円
取り扱い
店頭販売、県内酒店の一部、ネット通販、電話・FAX注文

昭和6年創業。先代から使い続けている木桶で諸味を造っています。醤油造り22年の片上裕之さん(44)は、「蔵の癖とは桶の癖のこと。木桶は癖がつきやすく、一度妙な諸味を造ってしまうと数年は苦労します。まあ、毎日、毎日諸味蔵に上がって、微生物のご機嫌うかがいをしているというのが本音」と汗をぬぐいます。

原料の大豆は国内産。無添加無調整。濃口醤油主流のなかで、コクを併せ持つ淡口醤油に凝っている数少ない蔵。「醤油のおいしさは、さまざまな味が絡み合って造りだすその奥行き。旨味だけではない」という信念が生かされています。

※蔵見学可能。

恒岡醤油醸造本店

住所
橿原市今井町
TEL
0744・22・2071
FAX
0744・22・8489
商品
濃口醤油「むらさき」1リットル350円、淡口醤油1リットル300円
取り扱い
店頭販売、電話・FAX注文。

明治末創業。江戸時代の面影が残る今井町にあり。濃口醤油のむらさきが主流。醸造期間は1年余り。91歳になる店主の恒岡新一さんが「醤油のまろやかさを出すには、春夏秋冬、自然界の法則を十分利用しないといけない」と語る通り、木桶でじっくりと醸造を行っています。

大門醤油醸造

住所
桜井市大福646-1
TEL
0744・45・2331
FAX
0744・45・2331
商品
本醸造醤油300円、やまとのぽん酢450円、だし醤油450円各300ml
取り扱い
店頭販売、電話・FAX注文、ネット通販。

明治40年創業の老舗醤油醸造業の家に嫁いできた当事から家事・育児と家業の仕事を切り盛りしてきた代表の大門奈良子さん(65)。主婦として、母としての目を醤油造りに生かしてきました。「旅行先で見つけたダシを料理に使ってみたら、上品な味でおいしかった。今は、これをだし醤油に使っています」。日々料理づくりに携わる主婦だからこそ発見できた技です。

5年前からは滋賀県の農家が栽培する無農薬大豆や小麦を使った醤油を限定数で製造。二夏を越すという熟成期間と同様に、原材料にもこだわりを見せます。「10年ほど前から醤油造りが楽しくなってきました。子どもを育てるのと同じで、愛情と手間をかければ、醤油はそれにきちんとこたえてくれます」とほほ笑む大門さん。あふれるアイデアで頭の中はいっぱいです。

女性醸造家の大門奈良子さん

主婦として、母としての目を醤油造りに生かしてきた(桜井市の大門醤油醸造)

Q.しょうゆの種類は

濃口、淡口(うすくち)、再仕込み、たまり、白醤油の5種類。濃口醤油は全国の醤油消費量の82%を占める。塩分は淡口が18%で濃口の15〜17%より高め。


このページの内容は2005年8月5日現在のものです。





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