ならリビング30周年を記念しての連載「暮らし彩光」、今回は「環境」をテーマに取り上げました。
地球に生きるのは、私たち人間だけではありません。人が生活しやすいように開発してきた社会の変化や、地球温暖化に象徴される地球規模の自然環境の変化は、人以外の生物たちにどのような影響を与えているのでしょうか。
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現在、吉野川に生息する魚の種類は37〜40種類。この数は以前に比べ、むしろ増えているそうです。その理由も、ブラックバスやブルーギルなどの外来種が入ってきたためで、これも魚社会にとっては、1つの環境の変化。いままでいなかった肉食の魚が入ってきたのです。「餌となる在来魚がいなくなれば、ブラックバスなども生きてはいけなくなる。そのため、アユなども数が減るなどの影響は出ているが、特定外来種被害防止法も施行されたので、生態系に影響を与える外来種は、今後少しずつではあるが減ってくるのでは」と、吉野川の生態系に詳しい御勢久右衛門さん(79歳・奈良産業大学名誉教授)は話します。 現在の「河川法」は、1896年に治水、1964年に利水、さらに1997年に「河川環境(水質、景観、生態系等)の整備と保全」などが加わりました。これまで、人の生活に重点を置いた治水や利水だけではなく、河川に生息する生きるものたちにも目を向けるようになったのです。 「開発も、魚が卵を産む場所、子育てをする場所、身を隠す場所など、生物がそこで暮らしてきた環境を確保しつつ進めていければ。川で泳がないまでも、裸足で入ってみようかなと思えるくらいの水質であれば、アユやホタルが充分生活できる場所になり得る」と御勢さんは話しています。
生まれた時から吉野川の近くに住み、川とともに育った。「吉野川を守る会」を立ち上げたり、「大和吉野川の自然学」(トンボ出版)を発行するなどのほか、理学博士として国との係わりも深い BOD水のきれいさや汚れを示す1つの基準として、「BOD」があります。水のなかに含まれる有機物の量を測ったものですが、値が大きいとそれだけ有機物が多く含まれ、汚れている川ということです。その有機物も、現在8割は生活排水によるもの。いかに人の生活が、川に住む生物たちに影響を与えているかが分かります。 |
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高度経済成長に伴い、原生林を切り崩し、その後はスギやヒノキの人工林が作られ始めました。そして、それらの木を育てるために、下に生え出した草木を刈り取ってしまう―これまでバランスよく釣り合っていた動植物の生態系は、こういったことでも影響を受けます。ネズミやウサギが隠れる草がなくなり、それらを餌とするワシなどもいなくなる図式は当然のこと。1980年代からイヌワシの数も急激に減ってきたそうです。 「里山の放置による竹林の拡大や、田畑の水路の整備なども、鳥の生態系に影響を与えます。また、春日山原始林も、鹿の数が増えたことや乾燥化が原因で、アカショウビンやミゾゴイは滅多に観られない鳥となりました」と日本野鳥の会奈良支部長の小船武司さん(70歳)。 狩猟法(1895年制定)も、1971年の改正を機に、保護に重点をおいたものにかわってきました。確かに保護が必要な鳥も多くいますが、狩猟人口の減少など、社会的要因によって増える鳥もいることも事実。自然的要因と社会的要因で増える鳥と減る鳥がいるのです。鳥の生態系も、人の社会と絡み合い、複雑なバランスの上で成り立っています。「人間本位の歴史を繰り返すことがないように」と小船さんは話します。奈良県の鳥「コマドリ」もその数を減らしていっているそうです。
左:以前は、春日山原始林でもよく観られたミゾゴイ 中央:アオサギ 右:オシドリ ともに奈良県ではよく観られるようになった鳥たち |
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セイタカアワダチソウやオオブタクサなど、外来種が目に付くようになってきた植物の世界。 また一方で、秋の七草の1つでもある「フジバカマ」や、ヒメユリ、ミズアオイなどは、すでに危惧植物となりつつあるそうです。外来種が直接の原因ではありませんが、自然破壊や温暖化、そして人による乱獲など、さまざまな要因があるようです。最近は、めずらしくなってきた植物を、行政や団体が保護する動きもあります。 「草花や木は、環境が悪いからといって、自ら移動できません。だから種子の散布により子孫を残しますが、人がその環境を取り上げることがないようにしたいもの」と野草の会あぜみち主宰の尾上ツヤ子さん(59歳)は話します。 乱獲などによる減少も許せませんが、生態系そのものに影響を与える、地球温暖化や酸性雨は、地球に住む私たち人間に原因があるのではないでしょうか。無償の癒しを与えてくれる木や草花だからこそ大切にしたいもの。尾上さんは「私が子どものころは、季節の野花が身近にあり、山野に出てはワラビ、ゼンマイなど採取して、生活の知恵を親に教えられた。自然の恵みは、暮らしのなかで生かせるものばかり。自然のなかでそれを伝えていきたい」とも話します。
左:外来種のセイタカアワダチソウ 危惧植物になりつつある花。中央:ミズアオイ、右:リンドウ |
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この地球上の全生物種のなかで、「昆虫」が占める割合は3/4以上。まさに、地球は昆虫の星。 人間が思うよりも、はるかにミクロな世界に生きる昆虫たち。人にとっては少しのスペースでも、虫にとっては生活に充分なスペース。「昆虫は、したたかなくらい環境に適応しようとします」と橿原市昆虫館学芸員の日比伸子さん。 たとえば、スズメバチなどは、野山に作る巣と、町中の人家に作る巣の大きさが違うそうです。町に住むハチは、巣を作る空間が少ないため、巣をコンパクトにし、働きバチの数も少なくしているのです。それによって餌も少なくすみ、さらにその餌(肉食)も、台所から失敬するなど事欠きません。阪神間でも、開発が進んでいる都市部では、ハチの被害が多くなりつつあるそうです。 一方、開発や乱獲が原因の1つである、ホタルの減少化。一頃に比べて、保護や増殖にむけての活動が活発になり、回復傾向にはあるそうですが、ホタルは外灯や橋を嫌がるデリケートな虫。川の水が干上がるようなことがあっても、数に影響がでてくるそうです。 そして、昆虫の世界にも外来種が観られるようになってきました。約10種類くらいに分かれる「赤トンボ」ですが、赤い色をした「秋茜」に代わって、最近よく目にするのは「ウスバキトンボ」と呼ばれる黄色っぽいトンボ。もともと南方系で奈良には生息せず、越冬もできないだろうといわれていましたが、今やあちこちで見かけます。そして、秋に入って夕方一番に「リーリーリー」と鳴く虫。こちらもまた南方系の「アオマツムシ」で、同じく日本古来の種類ではなく外来種。これらは、地球温暖化も影響しているのではないかと日比さんは話します。
左:なにかと話題のセアカゴケグモも外来種。かまれると痺れたりするため、注意が必要 中央:秋を告げる日本古来の昆虫と思いきや、外来種の「アオマツムシ」 右:ゲンジボタル。昔のようにホタルが飛び交っていた環境を取り戻そうと活動する人も多い |
吉野川を守る会事務局
日本野鳥の会奈良支部
野草の会あぜみち
橿原市昆虫館
このページの内容は2005年10月7日現在のものです。
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