特集

春の花 早春をさがして


スプリング・エフェメラル(早春の一瞬に咲く花)と呼ばれる春の妖精の花々が、県内に咲き誇っています。中には近畿では奈良県だけに自生している種類や、絶滅危惧種もありますので、出合えたら幸運。きっと心が和むはずです。山や野で咲く花はとても繊細なので、写真を撮るときは足元を確認すること。他の花を踏みつけてしまわないように気を付けて。春を迎えるうれしさは、人も花も同じです。早春の花々をさがしに行きましょう。

木陰のカタクリ ひっそりと咲く

「この場所でしか見れないカタクリの花が咲く時季に合わせて、ギフチョウが羽化します。花も蝶もやさしく見守ってください」というのは葛城高原ロッジフロント係の足高朋子さん。ロッジのフロントフロアに高原の花々やギフチョウの写真を展示。たくさんの人に見てもらいたいといいます。早春の一時、短い命の花と蝶。大切にしたいですね。

「カタクリを守るために奈良県森林保全課さんとトラスト協会さんがロープを張ってくれました」と葛城高原ロッジ代表取締役の宮脇栄治さん(49)はいいます。写真を撮る人が知らずに踏んでしまうそうです。カタクリは花が咲くまで7〜8年かかります。葉が1枚出て、冬は地表から消えます。何年かかかって葉が2枚になり、ようやくつぼみを付けるのです。早春の木陰で日が当たる一瞬だけその花を咲かせます。開花どきに出会えるとうれしいですね。

春を告げる代表格 フクジュソウの花

旧西吉野村の山間部に自生するフクジュソウは、20年前に文化財、天然記念物の指定を受けました。自生地は私有地になっています。

3年前、多く自生している場所に遊歩道を設置しました。夢中になって畑に入らないように注意しましょう。私有地に入るときは、民家に一声かけるのがマナー。今年は3月の上旬ごろが見ごろだそうです。雪が降ると写真を撮りに多くの人が殺到します。雪の中から顔を出すフクジュソウは春の訪れを伝える代表の花。また、群生地では黄色のじゅうたんのようになって華やかです。

「園芸店で売られている正月の寄せ植えと品種が違うので、持って帰っても育ちません。この自生地内で移植しても根づくことはありません」と一つの自生地を所有している尾野優さん(58)はいいます。自生地であっても増やすことは難しいのです。畑の下草を刈ってようやく育つ植物なので、訪れる機会があれば、決められた場所だけ歩くようにしましょう。

「桜、桃、サンシュユなどの花木を生業としているこの地域で、見に来る人が車を止める場所は生活道。妨げないようにしてください」というのは五條市西吉野支所地域振興課産業振興係係長の倉本勇作さん(52)。自生地の所有者は美しい花をぜひ見てもらいたいが、ルールは守ってほしいと望んでいます。

資料提供
京都植物同好会代表。環境省絶滅危惧植物調査担当の田中徹さん。

メ モ

かたくり観察会

日時
4月19日、22日9:30〜
参加費
3500円(ロープウェイ、食事代含む)
問い合わせ
0745・62・5083(葛城高原ロッジ)

森林浴と山野草園

場所
御所市高天
入場料
100円
問い合わせ
0745・66・0146(森村)

森野旧薬園

住所
宇陀市大宇陀区上新1880
入場料
300円
営業時間
9:00〜17:00
定休日
花の時季はなし
問い合わせ
0745・83・0002
備考
カタクリ3月下旬〜4月末
フクジュソウ2月下旬〜3月
三脚使用禁止

人生の転機 エビネの森

森本さん

早春の花ではありませんが、8年前、御所市高天に山野草園を開いた森村宗光さん(68)は、地エビネと他200種、6〜7000m2の広い森を開放しています。

「先の台風で木々が倒され、被害のあとに、森に花を植えようと考えました」と森村さん。友人から地エビネを譲り受け増やしているといいます。エビネというと里山で咲いていたものは採りつくされ、希少価値になっています。エビネの花は種類が違ってもほぼ同時季に開花します。針葉樹の暗い森の中、黄色の豪華な花々が明るくします。「ほしい人がいれば直接言ってほしい。分けることができますよ」と話します。4月末から5月の連休にかけて満開。自生地の復活ができたらいいですね。

守りたい野山の花 絶滅危惧図譜制作

掛本さん

「野生の花との出合いは、人生を潤してくれます。里山を巡っていて、新設道路などで植物環境が狭くなっていくのがさびしいです」と日本植物画倶楽部所属の掛本安乃さん(61)。昔から絵を描くことが好きだった掛本さんは、日本の絶滅危惧植物図譜の3点の細密画を担当。その絵は細部まで正確です。繊毛の1本1本を生える方向を間違えないで描きます。絶滅危惧を訴えるこの図譜は、広く海外に紹介されました。

絶滅危惧種になってしまったのも、環境悪化ばかりではありません。人の手にかかって少なくなった種も―。自然界は自然のままに、後世に伝えていきたいと思いませんか。



このページの内容は2006年2月24日現在のものです。





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