特集

女性陶芸家の手による器 県内窯巡り お気に入りの器探し


温もりのある和の器は、盛り付けられた料理によって、その表情を変える柔軟性があります。普段、使い手となることが多い女性たちは、その美しさも機能性もどちらも受けとめることができる感性の持ち主。作家のテイストと使いやすさを上手に融合しています。晩秋の一日、若手女性陶芸家の陶房を訪ねてみました。

 澄んだ空と山々の自然に包まれた川上村、匠の聚(むら)。「いにま」と名づけた陶房で、手びねりで一つ一つ丁寧に形を作り出す鈴木智子さん。油絵のマチエールのような白化粧が温かみのある表情を見せる鈴木さんの器は、ちょっと大ぶり。料理を盛りつけ、使い込むほどに、味わいを増していきそうな質感と包容力があります。
  「洋服はシンプルで着心地のいいものを大事にしてきました。器も同様。質を高め、さりげなく自分を表現していきたい」
  口当たりのよさ、洗いやすさ、使いやすさ。料理を作るなかで見つけた器の条件に、自己表現をどう重ねていくか。試行錯誤を繰り返し、ここ2年ほどの間で、ようやく自分の作風が見えてきたといいます。
  「ざらっとした雰囲気ですが、口当たりには、薄く釉をかけ、なめらかさを出しているんですよ」。細かい心遣いができるのは、使い手であるからこそ。暮らしをおしゃれに楽しむ女性の食卓にも似合いそうな品のよさを醸し出しています。

◇memo◇
いにま陶房」TEL:0746・53・2660。
匠の聚」(川上村東川TEL:0746・53・2381)、
陶屋なづな(広陵町馬見北TEL:0745・55・9117)で販売。

 点と線というプリミティブな記号を独特のインスピレーションで模様として描き上げていく。それが、いつのまにか―。西本奈穂さん(奈良市都祁在住)の器は、抽象的な画に、星や家、朝や夜といった具体的なイメージを重ね、ポップで軽快な楽しさを与えてくれます。
  「抽象的な模様にも私なりの意味があったのですが、あるとき、伝わっているのかな?と疑問が」。手にとってくれた人たちの第一声は、「かあわいい」。単純な言葉ですが、若い感性と西本さんの創作意図が、この一言にすべて凝縮されています。
  学生時代から共に陶芸を学んできた友人の石丸和美さん(32)との合作も多く、ライバルというより同士。「もの作りに関してはけんかをしたことがありません。お互い刺激されること、発見しあうことの方が多い」というと、皆、にわかには信じがたいという顔をするそうです。
  「粘土という自在な素材が自分には合っていた」という西本さん。ハコリエショップで二人の作品に出会うことができます。

「土のよさが出てくれれば、それが一番」という米田みゆきさん(45)。シンプルで優しいフォルムのなかに、どこか凛とした表情を併せ持つ粉引の器。自然がそこに息づくようなたくましさと柔らかさが同居します。
  都祁の山々の緑に囲まれた工房には勇壮な登り窯の姿が―。「薪をくべ、まる4昼夜焼き続けます。中が見えないため、煙の様子で想像しながら焼くのですが、空気の流れをよみ、炎の管理をするのは本当に難しいですね」。数十人の仲間とともに、交代で火の番。窯出しのときは、皆、窯の前にずらりと並び、固唾をのんで見守ります。
  「こんな風に使われたら、とイメージすることもありますが、それだけではのびやかさがなくなってしまいます。作りたいものを作る。なんといっても、楽しみの窯ですから」。
  3人の男の子のお母さんとして「子育ても生活も大いに楽しんでいます」と豪快な笑顔をみせながら、里山で採れた栗を甘露煮にして客をもてなす米田さん。登り窯の煙が消えると、里も静かに冬支度を始めます。


◇memo◇
奈良市小倉町の自宅工房ほかで教室を実施。TEL:0743・84・0036

 佐藤由紀さん(38)のテーマは、「自然とつながる」。「ひっかくという原始的な行為が楽しくて」と話すとおり、描かれた線刻紋や絵柄には、のびやかなリズムと小粋なセンスが感じられます。
  学生時代は動物学を専攻し、卒業後はシステムエンジニアとして就職したという異色の経歴。しかし、在勤の間も、「違う、ちがう」と心のなかで首を振り続けていたといいます。友人の死をきっかけに「人生にはタイムリミットがある」と気づいた30歳。まさに節目が転機になりました。今は、展覧会活動を中心にテーマを決め、それに沿った創作を主としています。
  「昨年のテーマは、旅する思い。インカの古道を歩き、すっかりはまってしまいました。常にインプットしていかないと創作表現はできません」
  生駒山を望む閑静な住宅街の工房。少し歩けば、雑木林の緑あふれる環境は、佐藤さんのイマジネーションにやさしく寄り添います。


◇memo◇
生駒市萩の台の自宅陶房「すぷらうと」で陶芸教室を実施。「スペースパナクティ」(平群町TEL:0745・45・5194)、創作市場「ゆめたがえ」(斑鳩町TEL:0745・74・3500)で常設販売。TEL:0743・77・6815

ハコリエ

7月にオープン。ショップ名は、箱プラスアトリエから。西本奈穂さんや石丸和美さん、創作仲間のハンドワーク作品を扱っています。皿やカップなどの器はもちろん、陶のボタンやアルファベットも若い感性が生かされ、個性的で新鮮。「小さい古いもの」がほっこりとした雰囲気を作り出しています。陶で作るボタン教室なども開催。
住所
桜井市阿部578。営業11時〜18時
TEL
090・1150・4613
備考
火、水曜定休(不定休あり)

 

 

器 穂垂(ほたる)

住宅街の自宅ショップ。器は使い込んでいくうちに味やつやが出てくる土ものが中心。磁器や輪島の漆、ガラスなどを含め、関西や関東で活躍する20人ほどの作家の器が並びます。「いつまでも大事に使い続けてほしいので、欠けたら漆を塗り、金箔を振り掛ける金継ぎ修理もしています」という店主の石澤英昭さん(35)。県内の作家では吉岡萬理さんの鉢やカップ、また、長谷川奈津さんの作品も扱っています。企画展もシーズンごとに開催。
住所
香芝市白鳳台2−31−7。営業10時30分〜17時30分
TEL
0745・78・3851
備考
水、木曜定休

 

あんず舎

「もの作りに対して真摯に取り組んでいる人、いい出会いをさせてもらった作家さんの器を扱っています」という店主の山下弘子さん(48)。高畑の志賀直哉旧居近く。女性らしい趣のある店構えで、陽だまりのような温かい雰囲気。信楽を中心に、各地の窯を訪ね、暮らしに潤いを与えてくれそうな日常使いの器を販売しています。飯碗、皿や鉢などをはじめ、花の器、犬や猫など動物のやきものもいろいろ。春と秋に企画展も開催。
住所
奈良市高畑町1237−7。営業11時〜日没
TEL
0742・23・1706
備考
水曜定休

 


このページの内容は2006年11月24日現在のものです。





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