桜木神社 (吉野町) 天武天皇も御手を清めた?万葉ロマンあふれる清流

県南部の主要道路である国道169号線をそれ、美しい深緑色の吉野川を渡り、小道をさらに南へ進むと、象(きさ)の小川のほとりにひっそりと鎮まる桜木神社に到着した。奈良交通宮滝バス停から15分ほどだろう。
縄文・弥生時代からの歴史を持つ吉野町宮滝には、大海人皇子(のちの天武天皇)がこの付近で過ごしたと伝わる。即位後も何度となく訪れていることから、天武天皇にとっては第二のふるさととも思える場所だったのではないだろうか。
同神社の祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)、少彦名命(すくなひこのみこと)、そして天武天皇だ。吉野町では、大海人皇子が吉野に身を隠していたとき大友皇子に攻められ、その際大きな桜の木に身をひそめて難を逃れたことから、天皇在位中は特に篤くこの地を敬い、崩御ののちに桜木神社が創建されたと伝えられている。

涼しげな小川のせせらぎを耳にしながら、木製の木末橋(こぬれはし)を渡ると、拝殿と杉の大木が目に入ってくる。
周囲には、民家も幹線道路もなく、小川のせせらぎと小鳥の鳴き声しか聞こえてこない。境内から川岸へ降り、流れで手を洗うと、心から清められた心地になる。
桜木神社をあとにして、さらに象の小川沿いに南へ進み、喜佐谷集落を抜けると、吉野山へ到る林道の入り口がある。象の小川は、吉野水分神社付近を水源とした川で、奈良時代には大伴旅人が「昔見し象の小川を今見ればいよよさやけくなりにける」と詠っている。
ますます暑さを増すこの季節。涼を求め、万葉のころから姿を変えず美しく流れ続けている、この小川に訪れてみては。(千)

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桜木神社
吉野郡吉野町
※このページの内容は2011年7月15日現在のものです。