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漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.35「不安感」にお悩みの方へ

 漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回はストレスが多いと言われる現代の悩み、「不安感」についてのお話です。

 

 

不安は誰もが感じる緊張や恐怖心などの感情の一種

 最近、心(こころ)のバランスが保てず「不安でたまらない」とお聞きすることが多くなっています。
 ストレスが多いといわれる現代ですが、直近ではコロナ禍で行動が制限され、感染後不調や仕事やライフスタイルの変化などへの影響が続いています。また、気象変動や社会情勢など、ひとりの力では防ぎようのないトラブルに悩まされることも少なくありません。
 ストレスを抱えきれず、精神面での不調を感じる方が増えているといわれています。
 程度はそれぞれであっても、不安は誰もが感じる緊張や恐怖心などのネガティブな感情の一種です。心理学においては「自己存在を脅かす可能性のある破局や危険を漠然と予想することに伴う不快な気分」と定義されています。
 例えば「何か悪いことが起こるのではないか」とか「失敗して迷惑をかけるのではないか」など、原因や理由がはっきりしていない状況で感じる恐れのような感覚といえるかもしれません。
 本来は何らかの危険が迫っている状況に警戒心を抱くときに生じるアラームのような機能を持ち、自分を守るために必要な感情なのです。
 不安は人間に備わっている自然な感情の現れといえますが、情報量が多く変化のスピードが速い現代では処理過程でのストレスが多く、対応に振り回されてしまって自身のペースが保てないことも多いため、不安を感じやすくなっているのかもしれません。
 関連する要因として、仕事や家庭、人間関係などでの心理的な要因、病気や生活の乱れによる身体的な要因、閉鎖的空間や騒音など環境的な要因から不安感が高まることもあります。

 

精神的な不安から心や身体に症状も

 極度の緊張や不安感が続き、日常生活に影響が及ぶ原因として、「不安症」といわれるものがあり、精神的な不安から、心や身体にさまざまな症状が起こることがあります。
 不安症には、以下のようなものがあります。

 

パニック症:突然、強い恐怖や動悸・めまい・発汗などの身体症状(パニック発作)が起こり、数分から数十分ほど続き収まります。パニック発作の苦しさや状況への恐怖から、再発を避けようと困惑することもあります。

 

社交不安症:他人からどう思われているかが気になり、人前で話すことや注目されることなどに対して過度な不安や恐怖を感じ、心臓がドキドキしたり、汗をかいたりして、パニック発作を起こすこともあります。自分の行動や言動に対して強い緊張を感じることで、人と接する場面を避けるようになることもあります。

 

強迫症:自分の思考や行動に対して完全さや正しさを求めすぎてしまい、不安で同じことを何度も繰り返したり、考えたりしてしまうものです。例えば、繰り返し手を洗ったり、何度も物を整理し直したりすることなど日常生活に影響が出てくることもあります。

 

全般性不安症:将来のことや日常生活の些細なことまで気になってしまい、特定の原因がなくても極度に不安や心配を感じる状態が続くものです。

 

 不安症は、ストレス自律神経の乱れ、性格や考え方などが影響して起こると考えられており、薬物療法では、抗うつ薬や抗不安薬などを用いて不安感や身体症状を和らげたり、心理療法では、カウンセリングなどにより少しずつ慣れさせていき緊張を取り除くなどの治療が行われます。
 不安感が長引き、だんだん強くなり日常生活に支障が出ている場合は、我慢せず医療機関を受診することも検討しましょう。

 

「不安を感じる自分」を受け入れて

 「不安」を感じたとき、どのように向き合えばよいのでしょうか。
 不安というネガティブな感情に支配されているときは辛いですが、いったん「不安を感じている自分」を落ち着いて受け入れてみましょう。主観的に「不安」になる立場でなく、不安になっている自分に気づいてあげる立場をとることで、自分の気持ちを整理しやすくなるのではないでしょうか。
 緊張や不安感といった心の状態は、自律神経の乱れや身体症状となって影響を及ぼすことがあります。例えば、過度の緊張から血圧が上昇したり、痛みやこりが生じたり、睡眠不足からアレルギー症状が悪化したりなど心と身体はつながっているのです。
 ですから、呼吸法やストレッチなど無理なくできる運動、趣味や瞑想法など、直接「不安」にかかわることでなくても心の安定に効果的なのです。

 

漢方では心と体は一つのものという「心身一如」

 相談者の多くは、そんなことは自分でわかっている……でも、うまくコントロールできないことに悩んでいる、といわれます。
 そんな時は漢方薬を試してみるのもおすすめです。漢方では心と体は一つのものであるという「心身一如」を基本にしています。
 身体の不調は身体の問題、心の不調は心の問題、と別々に分けるのではなく、全体を見て原因を考え「気・血・水」のバランスを整え内臓のはたらきを補うため、自然に不安感や不調が和らいでいくのです。
 漢方の五行では、秋は「悲しみ」、冬は「恐れ」の感情とつながりが深く、心が静かにパワーダウンしやすい季節です。暑い夏に気を消耗し、ダメージを受けたまま寒暖差に影響されて迎える秋冬は、早く寝て疲れをとり規則正しい生活で自律神経の安定をはかるなど、気力を保つ工夫も大切です。
 生活環境やストレスの程度、性格など「どうして不安を感じるか」には決まった理屈があるものではありません。辛い、怖い、心配、といった心のサインに気づき、思い切って休養をとる、専門家に相談する、など不安な自分に厳しくなり過ぎないことも大切かと思います。

※このページの内容は2024年11月15日現在のものです。

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