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漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.52 「物忘れ」にお困りの方へ

 漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回のテーマは「物忘れ」。心当たりがあるという人も多いのではないでしょうか?

 

 

脳の健康を守る生活習慣

 「何を取りに来たんだっけ?」「人の名前がとっさに出てこない」。50~60代になると、こうした物忘れや集中力の低下を実感する人が増えてきます。
 年のせいだからと諦めてしまいがちですが、今回は脳の健康を守る生活習慣についてご紹介していきます。

 

 

加齢による「物忘れ」と認知症の違いとは

 加齢に伴う自然な物忘れと、認知症による物忘れは異なります。
加齢による物忘れは、体験の一部を忘れるもので(例:昨日の夕食のメニューが思い出せない)、ヒントがあれば思い出せることが多く、日常生活への大きな支障はありません。また、自分が忘れていることを自覚しているのが特徴です。
 一方、認知症の目安として注意したいのは、体験そのものを丸ごと忘れること(例:昨日夕食を食べたこと自体を忘れる)、ヒントがあっても思い出せない、同じことを何度も聞く、日時や場所の感覚が薄れる、そして物忘れしていることへの自覚がないといった変化です。
 「年のせい」として放置せず、気になる様子があれば早めにかかりつけ医や物忘れ外来への相談をおすすめします。

 

 

脳の働きが低下する3つの主な原因

① 脳への血流不足

 脳はとても多くの酸素と栄養を必要とする器官です。動脈硬化や高血圧、運動不足などで脳への血流が滞ると、神経細胞の働きが低下し、思考力・記憶力に影響が出ます。

 

② 睡眠不足・睡眠の質の低下

 睡眠中、脳は記憶の整理と定着を行っています。また近年の研究では、睡眠中に脳内の老廃物(アルツハイマー病に関連するアミロイドβなど)が洗い流されることがわかっています。睡眠が不足すると、この"脳の清掃機能"が働かず、ダメージが蓄積しやすくなります。

 

③ 慢性的なストレス・女性ホルモンの変化

 ストレスホルモン(コルチゾール)が長期間高い状態が続くと、記憶に関わる「海馬」という脳の部位にダメージを与えます。また50~60代の女性では、エストロゲン(女性ホルモン)の急激な低下により、集中力・記憶力・気分に影響が出ることがあります。これは「ブレインフォグ(脳の霧)」とも呼ばれ、更年期の症状の一つとして知られています。

 

 

今日からできる! 脳を守る3つの生活習慣

① 脳に届く食事を意識する

 青魚(サバ・イワシ・サンマ)に豊富なDHA・EPAは、神経細胞の膜を柔らかく保ち、脳の伝達機能を助けます。緑黄色野菜やブルーベリーの抗酸化成分は、脳の酸化ダメージ(老化)を防ぎます。大豆製品(豆腐・納豆・味噌)に含まれる大豆イソフラボンはエストロゲン様作用があり、更年期の脳機能低下をサポートします。ナッツ類やオリーブオイルの良質な脂質は脳の細胞膜を守り、地中海食として認知症予防研究でも注目されています。また発酵食品(ヨーグルト・ぬか漬け)で腸内環境を整えることも、「腸脳相関」を通じて脳の健康につながります。
 反対に、砂糖の過剰摂取・超加工食品・過度な飲酒は脳の炎症を促進するため、できるだけ控えましょう。

 

② 「脳のゴールデンタイム」睡眠を整える

 就寝1~2時間前はスマホ・テレビのブルーライトを避け、寝室は暗く室温はやや涼しめに設定しましょう。毎日同じ時刻に起きて体内時計をリセットすること、朝に太陽の光を15~30分浴びることも効果的です。寝る前のカフェインやアルコールは睡眠の質を下げるため注意が必要です。
 目安は7時間前後の睡眠です。50代以降は眠りが浅くなりがちですが、まずは起床時刻を一定にすることから始めてみましょう。

 

③ 血流を上げる「ながら運動」と生活の工夫

 1日30分のウォーキング(10分×3回でもOK)など、無理のない有酸素運動を習慣にしましょう。階段を使う、一駅歩くなど、日常の中に"動く機会"を増やすだけでも違います。手芸・料理・楽器など指先を使う趣味も脳の活性化に効果的です。友人との会話や新しい体験も、脳への良い刺激になります。

 

 

漢方の視点から「脳の疲れ」を考える

 漢方では、物忘れや集中力の低下は「腎・心・血」という3つの要素の乱れが関わると考えます。
 まず、加齢とともに"生命エネルギー"の貯蔵庫である「腎」の力が衰えると脳の働きも低下するとされています。黒ごま・黒豆・山芋・クルミなど、黒くて滋養のある食材を日々の食事に取り入れることが、腎を養ううえで良いとされています。
 次に、ストレスや不眠が続くと「心(こころを司る力)」が乱れ、集中力や記憶力が低下しやすくなります。この場合は、心を落ち着かせ安眠を助けるような漢方薬が用いられます。
 また、血が不足して脳に十分な栄養が届かなくなることも、物忘れや思考力の低下につながると考えます。特に更年期前後の女性は血が不足しやすい時期でもあり、血を補い巡らせることを目的とした漢方薬が選ばれることもあります。

 

 

「今日」から守る脳の健康

 物忘れや集中力の低下は、年齢のせいだけではなく、血流・睡眠・食事・ストレスといった日常習慣が大きく影響しています。また、個人差もあります。
 まずは一つ、できそうなことから始めてみましょう。毎朝15分散歩してみる、夕食に週3回青魚を取り入れてみる、就寝前のスマホを30分早めにやめてみるなど、日々の積み重ねが10年後の脳を守ることにつながるのではないでしょうか。

※このページの内容は2026年4月17日現在のものです。

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