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漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.56 「夏バテ」が心配な方へ

 漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回のテーマは「夏バテ」です。今年の夏、すでに夏バテという人も多いのでは。過酷な夏を乗り切るため、自分でできる対処法を学びましょう。

 


 夏の暑さも新時代に入り、「酷暑」という言葉をよく耳にします。 最近では、夏に体調を崩すと長引く人も増えています。年齢的な体力低下なのか?更年期なのか?と対策に戸惑う声も聞かれます。
「夏バテ」は病気ではありませんが、病気を引き起こすきっかけとなったり、日常生活にも深刻な影響が及ぶこともあるため、今回は過酷な夏を乗り切る知恵について取り上げたいと思います。

 

そもそも夏バテとは?

 「夏バテ」とは、暑さによる体への負担が積み重なり、さまざまな不調が現れる状態の総称です。医学的な病名ではありませんが、夏の時期に多くの人が経験する身近な体調不良の一つです。
 私たちの体には、体温を一定に保つための調節機能が備わっています。その中心となって働いているのが自律神経です。
 暑い環境では、体は汗をかいたり、皮膚の血管を広げたりすることで、体内にこもった熱を外へ逃がそうとします。しかし、高温多湿の日が続くと、自律神経は体温調節のために働き続けることになり、大きな負担がかかります。
 さらに、冷房の効いた室内と暑い屋外を行き来することによる温度差、寝苦しさによる睡眠不足、発汗による水分や電解質(ナトリウムなど)の不足、冷たい飲食物の摂り過ぎによる胃腸機能の低下など、さまざまな要因が重なることで、体のバランスが崩れやすくなります。
 その結果、全身のだるさ、疲れやすさ、食欲低下、胃腸の不調、睡眠の質の低下、集中力の低下などの症状が現れます。
 つまり夏バテとは、「暑さそのもの」だけが原因ではなく、「暑さによる体への負担が積み重なった結果、生じる体調不良」と考えると分かりやすいでしょう。
 症状が軽いうちは、休養や生活習慣の見直しによって改善することが多いですが、不調が長引く場合や、発熱、強い倦怠感、意識の変化などを伴う場合は、夏バテと思っていても熱中症や感染症、甲状腺疾患など別の病気が隠れていることがあります。気になる症状が続く場合は、医療機関への相談も大切です。

 

 

どんな人が夏バテになりやすいのか?

 夏バテは誰にでも起こる可能性がありますが、特に次のような人は注意が必要です。
 ① 40~60代の女性
 更年期の時期は女性ホルモンの変化に伴い、自律神経のバランスが乱れやすくなります。ほてりや発汗、疲れやすさ、不眠などの症状と夏バテが重なることで、不調が強く現れることがあります。

 ② 胃腸が弱い人
 もともと食が細い人や胃もたれしやすい人は、暑さによって食欲が低下すると十分な栄養を摂ることが難しくなります。エネルギー不足が続くことで、疲労感が抜けにくくなります。

③ 冷房の効いた室内で過ごす時間が長い人
 オフィスや商業施設など、冷房の効いた環境と屋外の暑さを何度も行き来すると、自律神経は体温調節を繰り返すため、大きな負担がかかります。体の冷えを感じる人もいます。

 ④ 睡眠不足が続いている人
 寝苦しい夜が続くと睡眠の質が低下し、疲労回復が十分に行われません。睡眠不足は自律神経の働きにも影響を与えるため、夏バテを長引かせる原因になります。

 ⑤ 水分や栄養が不足しやすい人
 汗を多くかくにもかかわらず、水分補給が少ない人や、食事を簡単に済ませることが多い方は、脱水や栄養不足になりやすく、夏バテのリスクが高まります。

⑥ 持病のある方や高齢の人
 糖尿病や心臓病、腎臓病などの持病がある人、高齢の人は体温調節機能や体力が低下している場合があります。また、加齢により暑さや喉の渇きを感じにくくなることもあり、脱水や熱中症にも注意が必要です。

 

 

夏バテと熱中症はどう違うのか?

 「夏バテ」と「熱中症」は、どちらも夏に起こりやすい体調不良ですが、原因や重症度は異なります。
 「夏バテ」は、暑さによる体への負担が少しずつ積み重なり、自律神経の乱れや睡眠不足、食欲低下、水分・栄養不足などが重なって起こる慢性的な体調不良です。
 「熱中症」は、高温多湿の環境で体温調節がうまくできなくなり、体内に熱がこもることで起こる急性の病態です。重症化すると命に関わることもあり、早急な対応が必要になります。

 

夏バテの主な症状
* 全身のだるさ
* 疲れやすい
* 食欲不振
* 胃もたれ
* 睡眠の質の低下
* 集中力の低下
 症状は数日から数週間かけて徐々に現れることが多く、生活習慣を見直すことで改善が期待できます。

 

熱中症の主な症状
* めまい、立ちくらみ
* 筋肉のけいれん
* 強い頭痛
* 吐き気、嘔吐
* 意識がもうろうとする
* 呼びかけへの反応が鈍い
* 高い体温
 これらの症状がみられる場合は、涼しい場所へ移動し、体を冷やし、水分・電解質を補給することが大切です。自力で水分が飲めない、意識がはっきりしない場合は、ためらわず救急車を呼ぶ必要があります。

 

 

夏バテと熱中症は関係している

 

 夏バテと熱中症は別のものですが、互いに影響し合います。
 例えば、夏バテで食欲が落ち、水分や栄養が不足すると、脱水状態になりやすくなり、熱中症のリスクが高まります。
 逆に、熱中症から回復した後も、体力や食欲が戻らず、夏バテのような状態が続くこともあります。

 

 

漢方も効果的

 慢性的な不調や体の元気エネルギーの不足には、漢方もおすすめです。
 夏は暑さによって消耗する「気(き)」(=体を動かすエネルギー)「津液(しんえき)」(=体を潤す水分)を補うことで、疲れやすさ、食欲低下、口の渇き、胃腸の不調などを解消するようサポートします。

 

 

夏バテを防ぐためにできること

 

 夏バテは、一つの特効薬で防げるものではありません。毎日の生活習慣を少し意識することが、暑さに負けない体づくりにつながります。

◎水分は「のどが渇く前」に補給する
 汗をかくと、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。
 のどの渇きを感じた時には、すでに軽い脱水が始まっていることもあるため、こまめな水分補給を心がけましょう。大量に汗をかいた時は、水やお茶だけでなく、電解質を補給できる飲み物を上手に取り入れることも大切です。

◎食事を抜かず、たんぱく質を意識する
 暑さで食欲が落ちると、のど越しのよいものや食べやすいものだけで済ませてしまいがちですが、疲れた体を回復させるためには、肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質に加え、ビタミンやミネラルも欠かせません。
 一度にたくさん食べられない時は、食事の回数を分けるなど、無理なく栄養を補う工夫をしてみましょう。

◎冷たいものの摂り過ぎに気を付ける
 冷たい飲み物やアイスクリームなどは、一時的に涼しさを感じますが、摂り過ぎると胃腸が冷え、消化機能が低下しやすくなります。
 冷房で体が冷えていると感じる時は、温かい汁物や常温の飲み物を取り入れることもおすすめです。

◎良質な睡眠で疲労をためない
 睡眠は、日中の疲れを回復させる大切な時間です。
 寝室の温度や湿度を適切に調整し、エアコンや扇風機を上手に利用して、眠りやすい環境を整えましょう。寝苦しさによる睡眠不足は、自律神経の乱れや疲労の蓄積につながります。

◎適度に体を動かす
 「暑いから」と一日中動かずに過ごすと、体力や筋力が低下し、かえって疲れやすくなることがあります。
 ウォーキングや軽いストレッチなど、涼しい時間帯に無理のない範囲で体を動かすことは、血流の改善や自律神経の働きを整えることにも役立ちます。

◎エアコンを我慢し過ぎない
 「冷房は体に悪い」と考え、暑さを我慢することはおすすめできません。
 室温が高い環境では熱中症の危険性も高まりますし、設定温度を低くし過ぎると体が冷え、負担がかかります。
 室温の目安は28℃前後とされていますが、湿度や体調、活動量によって快適な温度は人それぞれです。冷えを感じる時は羽織るものを利用するなど、体に負担の少ない環境を心がけましょう。

 

 夏バテを防ぐために大切なのは、暑さを我慢することではなく、今のご自身の体調に合わせて過ごし方を整えることです。
 食事、睡眠、休養のバランスを意識し、体が発する小さな変化に早めに気付くことで、暑い季節も健やかに乗り切ることができます。
 「毎年夏になると疲れが残る」「以前より暑さがこたえる」と感じる人は、年齢や環境だけが原因と考えず、ご自身の体質や生活習慣を見直す機会にしてみましょう。
 日々の小さな養生の積み重ねが、夏の不調を防ぎ、秋以降の元気な体づくりにもつながります。

※このページの内容は2026年8月7日現在のものです。

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