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漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.29「膀胱炎」でお悩みの方へ

 漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は膀胱(ぼうこう)炎の悩みを持つ方に読んでいただきたいお話です。

 

 

女性からの相談も多い膀胱炎

 身近に起こる不調の一つに「膀胱炎」があります。トイレに行ったばかりなのにまたすぐに行きたくなる…という経験がある方も多いのではないでしょうか。膀胱炎は誰にでも起きる可能性があり、男性に比べ尿道が短い女性では2人に1人がかかったことがあるともいわれます。
 「残尿感」「排尿時の痛み」などの症状が思い当たりますが、頻繁に発症を繰り返す「慢性膀胱炎」に悩む女性からの相談も増えています。

 

膀胱炎の主な症状

 膀胱炎は膀胱が炎症をおこす病気で、大腸菌などの腸内細菌が膀胱に侵入して感染する尿路感染症のひとつです。炎症により膀胱が刺激されることで、頻尿や残尿感、排尿時の痛みや下腹部痛が生じたり、尿が濁る、血尿が出るなどの症状が見られる場合もあります。

 

・頻繁にトイレに行きたくなる
・排尿時に違和感がある
・排尿後に残尿感がある
・尿が濁る
 
 膀胱炎の症状を放っておくと、悪化して発熱や背中や腰に強い痛みが発生したり、腎盂(じんう)腎炎に発展することもあり、かかってしまった時はきちんと治しきっておくことが大切です。

 膀胱炎の種類には、一時的な感染ですぐ治る「急性膀胱炎」以外にもいくつか種類があり、前立腺肥大症や尿路結石など基礎疾患が要因となって発症しやすい「複雑性膀胱炎」や、血尿をともなう「出血性膀胱炎」、尿が溜まると膀胱に痛みが起こる尿意切迫感の症状をともなう「間質性膀胱炎」などがあります。

 

女性がかかりやすい理由

 膀胱炎は、男性よりも女性がかかりやすいといわれる理由として、肛門や膣から尿道口までの距離が短く、尿道も短いことがあげられます。
 また、女性が使うナプキンやオリモノシートもこまめに換えずに長時間つけっぱなしにしておくと菌が増えやすくなり、膀胱炎の感染につながる可能性も考えられます。
 「菌による感染」というと、もしかしたら"バイキン"とか"不潔"と思われるかもしれませんが、膀胱炎の原因となる大腸菌などは「腸内細菌」ですから特別な凶悪な菌というわけではなく、常に私たちの肛門にいる「常在菌」なのです。
 常在菌がいるから必ず膀胱炎になるかといえば、普段は何ともない人のほうが多いはずで、尿道から菌が侵入したとしても多くは排尿とともに洗い流されているのです。

 

 

免疫力が弱ると感染症も引き起こす

 私たちには「免疫力」によって不必要な菌は排除される仕組みが働き、感染を未然に防ぐ力が備わっているのです。
 しかし、健康状態が良くないときは免疫力が弱り、感染が起こりやすい傾向になってしまいます。疲れがたまったり、睡眠不足やストレスなど無理が重なると体力も低下し、病気にかかったりしても免疫力が弱まります。
そうすると自身の常在菌にも対処することができず、感染症などを引き起こすことになってしまうのです。
 慢性的に繰り返し膀胱炎を発症している場合は、根底に慢性的な免疫力の低下があるのかもしれません。

 

免疫力の低下を防ぐために

 「免疫力」低下を防ぐには日頃の生活が大切です。
 分かっていても、ついやってしまうこと、仕方ない時もあるかもしれませんが、少し見直すことで改善のきっかけになる場合もあると思いますので紹介します。

 

◎慢性的な疲れ
 疲れた状態では抵抗力も弱ってしまいます。「疲れがたまると風邪をひく」という相談には、もちろんかぜ薬も必要ですが、疲れの回復を助ける漢方薬をすすめるように、膀胱炎も同様です。トイレに行く時間もないほど忙しすぎたり、夕方から夜にかけて違和感がある方はご注意ください。

 

◎ストレス
 ストレスも身体機能を弱らせる重大な要因です。ストレスがかかると自律神経に影響し腎臓や膀胱の動きを妨げます。緊張したり焦ると頻尿になったり、尿の出が悪くなって残尿感がある方は、リラックスを心がけましょう。

 

◎冷え
 体温が1度下がると免疫力が30%低下するといわれるように、冷えは免疫力を弱らせることにつながります。体が冷えると頻尿になるのは免疫力低下のサインととらえ、温かくするようにしましょう。慢性的な冷え性の方は要注意です。

 

 

漢方では老化をコントロールするのは「腎」

 また、加齢とともに免疫力は低下します。健康であっても20歳をピークに徐々に低下し始め、 40歳代でピーク時の50%ほどまで低下する人もいます。
 漢方では加齢による影響=「老化」をコントロールする役割を担うのは「腎」であり、成長発育から老化に至る生命エネルギーの源とされています。
 つまり「腎」が弱くなることは老化が進むことであり、老化が進むことは「腎」が弱くなることであるといえます。そのため加齢により、尿もれ、頻尿、夜尿、残尿など腎や膀胱機能の衰えや膀胱炎など免疫力低下によるトラブルも起こりやすくなってきます。
 漢方では「補腎」という考えがあり、生命力や生殖力を養うことを目的とした補腎薬が用いられてきました。食材にも「腎」を補う作用のものがありますので、日頃の食事に取り入れ免疫力の維持にお役立てください。

 

「腎」を補う食材

黒米 カシューナッツ 栗 黒豆 枝豆 カリフラワー キャベツ ごぼう ぜんまい ブロッコリー マッシュルーム うなぎ えび 貝柱 さざえ さより ししゃも すずき スッポン たい なまこ まながつお 鶏レバー 豚肉など
(参照:現代の食卓に生かす「食物性味表」 国立北京中医薬大学日本校 監修より)

 

 膀胱炎の原因や症状には生活との関連が強く、妊娠中には大きくなった子宮に膀胱や尿道が圧迫されて尿が残りやすくなって感染しやすくなります。日頃からかかりやすい人はコーヒーや酸味が強い食べ物は控えめに、糖質や高たんぱく質の摂り過ぎも要注意です。

 生活習慣や症状にも個人差がありますので、まずは思い当たることから対策を始めてはいかがでしょうか。

※このページの内容は2024年5月24日現在のものです。

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