漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.45 「聞こえづらさ」にお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は、゛年のせいだからしかたない”と思ってあきらめている人も多い、「聞こえづらさ」についてのお話です。

早めのケアで早期回復や予防に
 ある時から聞こえづらさを感じたり耳鳴りが始まったり、聞こえ方に違和感があり検査を受けても耳そのものに異常はなく、「年齢のせいだからしかたない」と思っている人もいるのではないでしょうか。
 「人と会話していると聞き返すことが増えた」「静かなときに"キーン"と耳鳴りがする」など、日常生活の中での身近な悩みかもしれません。
 耳の不調を感じる人は40代あたりから急増します。
 耳鳴りや聞こえづらさは年齢の影響もありますが、原因を理解し、早めにケアを始めることで進行を緩やかにし、症状を和らげることも可能です。
耳鳴り・聞こえづらさの原因
一般的に、耳鳴り・聞こえづらさの原因として以下の4つが挙げられます。
1・ 加齢による「有毛細胞」の減少
 耳の奥には「有毛細胞」という、音をキャッチする小さなセンサーがあります。
 40代を過ぎると少しずつ数が減り、特に高音域(サ行・タ行など)が聞き取りづらくなるのが特徴です。
2・ 血流不足と動脈硬化
 内耳は非常に細い血管で栄養を受け取っています。
 加齢、動脈硬化、ストレスなどで血流が滞ると、酸素や栄養が不足し、耳鳴りや聞こえづらさの原因となります。
3・ストレスと自律神経の乱れ
 強いストレスや睡眠不足が続くと、自律神経が乱れ、耳周辺の血流や神経伝達に影響が出ます。
 耳鳴りは、ストレス性であることも多いです。
4・騒音・イヤホンの影響
 長時間の大音量、イヤホンやヘッドホンでの音楽鑑賞は耳を酷使します。
 気づかないうちに有毛細胞を疲弊させ、耳鳴りや難聴を悪化させる可能性があります。
漢方では耳の健康は「腎(じん)」と深い関係が
 加齢にともなう体力低下やストレスによるバランスの乱れなどが関係することも多いため、病気の治療という視点ではなく"体のはたらき"というとらえ方が効果的な場合もあります。
 漢方では、耳の健康は「腎(じん)」と深い関係があると考えます。
 「腎」は生命エネルギーを蓄える臓腑で、成長・老化・生殖をつかさどります。
 年齢とともに腎の力(=腎精)が不足すると、耳鳴り・聞こえづらさ・めまいなど耳に関係する不調が出やすくなります。
耳鳴り・聞こえづらさの原因について体質面から分けて考えることで対処することもできます。
◎「腎虚(じんきょ)」=加齢や疲労で腎の力が低下するもので、耳の症状以外にも腰痛・足腰の冷え・疲れやすさなども起こりやすいタイプです。
◎「瘀血(おけつ)」=血流が悪く耳に栄養が届きにくい状態で、頭痛・肩こり・頭の重だるさなど血行不良による症状も起こりやすいタイプです。
◎「気血(きけつ)不足」=エネルギーや血液不足が根底にあり、疲れやすい・ふらつき・めまいなどの慢性症状を抱え、体力にも余裕がないタイプです
体質や原因によって対応法も異なる
 言葉の表現では、同じ"耳鳴り"であっても、体質や原因によって対応も異なります。
 耳の不調につながりやすい生活習慣として心当たりがある人は、見直してみましょう。
・睡眠不足、不規則な生活 → 腎の力を消耗し、回復の遅れにつながります。
・過度なストレス → 自律神経が乱れ、耳鳴りを悪化させてしまうことがあります。
・長時間のイヤホン、大音量 → 内耳に大きな負担をかけ、有毛細胞の疲弊を招きます。
・冷え、血行不良 → 耳の奥まで十分な酸素と栄養が届きにくくなります。
・塩分やカフェインの過剰摂取 → 内耳のむくみや血流低下を招き、耳鳴りの悪化を招くことがあります。
日常でできる「耳ケア」として、耳周りを温めたり適度な運動などで 血流を促進、睡眠の質を高めて耳とつながる「腎」を養う、塩分を控えめにして 内耳のむくみ予防、大音量・イヤホンはほどほどにして 有毛細胞を守るなども心がけてみてください。
 急に聞こえづらくなった、めまいを伴う耳鳴りがある場合は、すぐに耳鼻科を受診することも大切です。
 耳の不調は「年齢のせいだから仕方ない」と思われがちですが、早めにケアすることが早期回復や予防のためにも効果的です。
※このページの内容は2025年9月19日現在のものです。







