漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.53 「生活習慣病」が気になる方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回のテーマは「生活習慣病」。気にはなっているのだけれど……という人も多いのではないでしょうか?

体の声に耳を傾けて
健康診断の頃になると相談が増えるのが「生活習慣病」です。
「健康診断でひっかかってしまった」「コレステロールや血糖値が気になってきた」という声が聞かれます。
今年もまたこの時期がやってきた……と思いつつ、生活習慣を見直すことは日常生活のクセを直すようなものですから、簡単なことでも自制心をもって毎日続けることはなかなか簡単ではありません。
つい後回しになっていたり、わかっているつもり、という方もおられるかもしれませんが、あらためて見直してみましょう。
体の声に耳を傾けて
生活習慣病とは、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒など、日々の生活習慣が発症や進行に深く関与する“疾患群の総称”です。
かつては「成人病」と呼ばれ、加齢とともに発症するものと考えられていましたが、実は生活習慣の積み重ねが大きく影響することが明らかになり、1996年頃から「生活習慣病」という言葉が使われるようになりました。年齢を問わず、“日々の習慣次第”でリスクが高まる病気といえます。
どんな病気が含まれるの?
生活習慣病に含まれる代表的な疾患には、がん・心疾患・脳血管疾患・糖尿病・高血圧症・脂質異常症・肥満などがあります。これらは、日本人の死因の上位を占める深刻な病気でもあります。
また、それぞれが単独で存在するだけでなく、肥満をベースに糖尿病・高血圧・脂質異常症が重なって発症しやすくなる状態を「メタボリックシンドローム(メタボ)」と呼ばれます。個々の数値が軽度でも、複数が重なることでリスクが何倍にも増し、動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中につながることがあります。
生活習慣病の多くは、かなり進行するまで自覚症状がほとんどないのが特徴です。ですから、「なんとなく不調」を感じる前から、日常の習慣を意識することが大切になります。
予防のポイント
生活習慣病の予防は、「食事」「運動」「睡眠・休養」「禁煙・節酒」という日常の積み重ねが基本です。
食事については、野菜をしっかりとり、塩分・脂質・糖質の過剰摂取を控えることが大切です。運動は、1日30分程度のウォーキングなど無理のない有酸素運動を継続することが勧められています。睡眠は体の修復と代謝の安定に欠かせず、7時間前後を目安にリズムを整えましょう。禁煙と過度な飲酒を控えることも、リスク低減に大きく貢献します。
漢方では「未病」ととらえる
漢方では、生活習慣病に相当する状態を「未病(みびょう)」として古くから重視してきました。病気として発症してはいないけれど、体のバランスが崩れはじめている状態のことです。西洋医学が検査値の異常に着目するのに対し、漢方は体全体の「気・血・水(き・けつ・すい)」のめぐりや、臓腑の働きのバランスを整えることを重視します。
例えば、食べすぎや運動不足による肥満・メタボは、漢方では「痰湿(たんしつ)」、つまり体内に余分な水分や老廃物がたまりやすくなった状態と捉えます。この状態が続くと血のめぐりも悪くなり「瘀血(おけつ)」を生じ、動脈硬化や高血圧、糖尿病へと進みやすい体質へと向かうと考えます。
ストレスや不規則な生活が続くと「気」のめぐりが滞り、「肝」の働きが乱れて血圧が上がりやすくなったり、気力の低下や消化器系のトラブルにもつながります。
また、加齢とともに「腎」の力が衰えると、代謝が落ち、体のさまざまな機能が低下しやすくなります。腎を養う食材として、黒ごま・山芋・クルミ・黒豆などが古くから知られています。日々の食卓に少しずつ取り入れてみるのも良いでしょう。
漢方的な生活習慣病予防の基本は、「過ぎたるを補い、不足を補う」ことです。食べすぎず、動きすぎず、しかし適度に体を動かし、心を穏やかに保つ。こうした「中庸(ちゅうよう)」の考え方が、体のバランスを保ち、未病を防ぐ点において現代生活にも通じるのではないでしょうか。
「今」からできること
生活習慣病は、ある日突然発症するものではなく、長年の積み重ねの結果として現れます。逆に言えば、今から意識し習慣を少し変えるだけで、未来の体は変わっていきます。
まずは一つ、できそうなことから始めてみましょう。夕食の野菜を一品増やしてみる、週に3回10分のウォーキングを加えてみる、就寝前のスマホを少し早めにやめてみる……など、小さな一歩の積み重ねが10年後・20年後の健康へとつながっていきます。
体の声に耳を傾けながら、ご自身の体質に合った養生を続けていきましょう。
※このページの内容は2026年5月22日現在のものです。









