漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.32「過敏性腸症候群」にお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は統計上10人に1人が悩んでいるとされる、「過敏性腸症候群」についてのお話です。
予備軍の「下腹部痛」の症状は6人に1人とも
お腹の調子が安定しない日は、気分まですっきりしないと感じられるのではないでしょうか。
たとえば、通勤や通学時に電車やバスに乗る時や、時間に追われたり、試験前や大事な仕事の場など、急に腹痛が起こり下痢や便秘に悩まされた経験はありませんか。
暴飲暴食などの食事の影響や、冷えなど生活習慣の問題、生理周期など、お腹の違和感につながる要因は身近にあります。中でも胃腸にはとくに病変がみられないのに、腹痛や腹部の不快感、下痢や便秘をくり返す場合は「過敏性腸症候群」といわれます。
統計上は、10人に1人程度が過敏性腸症候群に悩まされており、その予備軍である「下腹部痛」の症状がある人は6人に1人ともいわれています。 特に20~40代の方に多くみられます。
自律神経の乱れが要因
病気が原因で起こる症状ではないことから、精神的なストレスによる自律神経の乱れによって、腸管の運動が異常に高進し、刺激への反応が過敏になることが要因と考えられています。
社会の複雑化やストレスの増加に伴い、不安、抑うつ、恐怖などの心理的要因や自律神経の失調が慢性化して不調に悩む人が増えているのでしょう。
過敏性腸症候群は、腸には異常が認められないのに、精神的ストレスを受けると腹痛や膨満感など不快感を伴い下痢や便秘の症状が起こり、慢性的に繰り返すのです。
症状から主に4つの型に分類
過敏性腸症候群は、症状などから主に4つの型に分類されます。主に下痢の症状が起こる「下痢型」、便秘の症状が起こる「便秘型」、下痢と便秘が同程度起こる「混合型」と、どれにも分類されない「分類不能型」もあります。
◎便秘型
ストレスを感じると便秘がひどくなる。
緊張すると腹痛が起こり、トイレに行くがコロコロ便が少ししか出ない。
◎下痢型
急に便意を感じ1日に何度もトイレに行く。
激しい下痢、水のような便、粘液のある便が出る。
◎混合型
ストレスを感じるとおなかの状態が不安定になり、便秘と下痢を繰り返す。
◎分類不能型
上記3つに分類されない症状で、おならが頻繁にでる、膨満感がある場合は「ガス型」といわれる。
脳と腸は密接に情報を交換し合う
私たちには「脳腸相関」といわれる仕組みがあり、脳と腸は密接に情報を交換し合っています。
精神的ストレスを受けると、神経やホルモンの働きにより大腸の動きが活発になり腹痛とともに便通に異常が起こります。たとえば「トイレに行きたくなったらどうしよう」とか「トイレがなかったら困る」のような不安や緊張感などです。
体が感じたストレスは脳へと届けられ、脳から分泌される"ストレスに関係するホルモン"が消化管に作用して腸の運動リズムを乱して、下痢や便秘といった症状を引き起こすのです。
大腸の動きの調節がうまくいかないことで、腹痛や不快感、下痢や便秘といった症状をさらに敏感に感じるようになり、またそれがストレスとして脳へ伝わり、脳と腸の間で悪循環が起こり、症状の悪化につながってしまうのです。
規則正しい生活など生活習慣を整えること
改善するには、ストレスの原因をなるべく避けて、ストレスを抱え込まないようにすることが大切ですが、わかっていてもなかなか難しい方も多いのではないでしょうか。
まずは、規則正しい生活と十分な睡眠、適度な運動など生活習慣を整えること、暴飲暴食を控え、脂こい食べ物、激辛食など消化に負担がかかるものや、アルコールやコーヒーなどのとり過ぎも見直しましょう。
治療としては薬物療法や心理療法などがありますが、特に漢方では精神面にも身体症状にも効果的ですのでお困りの方には一度お試しいただきたいと思います。
お一人おひとり生活環境も立場も、また性格やストレスへの対応もさまざまですから、対処法も個々人に合った方法を見つけていくことが大切ですね。
※このページの内容は2024年8月23日現在のものです。