漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.44 「隠れ貧血」にお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は、特に女性に多い傾向がある「隠れ貧血」についてのお話です。
きちんと食べて休むことで暑い季節を健やかに
毎年のように更新される"暑さ"。予想してはいたものの、未知なる環境に、生活様式にも変化がみられ、体調面でも今までにない違和感が続く人もおられるのではないでしょうか。
だるい、眠れない、疲れやすい……夏バテかな?と思いながらやり過ごしていませんか。
夏は特に"隠れ貧血"が進みやすい季節です。貧血と聞くと、「血液検査で引っかかるほどではないから大丈夫」と思われがちですが、実は血液データに異常が出る前から、体の中では鉄不足が進行していることがあります。これを「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」と呼び、特に女性に多い傾向があります。
鉄不足でさまざまな不調に
鉄は、血液の中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」の材料になるだけでなく、エネルギー代謝、ホルモンの生成、脳や神経の働きにも関わる大切なミネラルです。鉄が不足すると、体は酸素不足のような状態になり、疲れやすさ、息切れ、集中力の低下、気分の落ち込み、冷え、抜け毛など、さまざまな不調につながります。
夏は、暑さで汗をたくさんかくと、水分だけでなく、鉄や亜鉛などのミネラルも一緒に体の外へ流れ出ていきます。微量とはいえ、毎日の積み重ねとなると影響も及んできます。加えて、暑さで食欲が落ち、つい冷たいものやのど越しのよいものを好むようになり、鉄分やたんぱく質をしっかり摂ることが難しい背景もあります。
冷房や冷たい飲食物で胃腸が冷えると、鉄の吸収率も落ちてしまいます。特に植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」は、吸収率が低く、ビタミンCなどの助けがないとうまく吸収されません。胃腸の働きが弱っていると、せっかく摂った栄養も十分に生かせないのです。
女性はもともと月経によって定期的に鉄を失っているうえに、夏場のこうした条件が重なると、さらに鉄不足が進みやすくなりますので要注意です。
夏の貧血対策にできること
◎鉄分豊富な食材(赤身肉、レバー、しじみ、小松菜など)を意識的に摂取
↑ ビタミンCと一緒に摂ると吸収率UP(例:レモン+ほうれん草)
◎胃腸を冷やさない、冷たいものの摂り過ぎ注意
◎汗をかく日はミネラル補給も意識(梅干し、味噌汁など)
◎強い日差しや過労で体を消耗しすぎないように心がけましょう
疲れがとれない、気分が晴れない、眠りが浅い……そんなときは、無理にがんばり続けるのではなく、休むことも"養生"のひとつです。
食べ方、冷え対策、睡眠といった日々の暮らしの中から整えていくことが、何よりの予防になりますが、なかなか調子が戻らない場合は、漢方薬で血を補い巡らせることで体を立て直すようサポートすることも可能です。
きちんと食べて、きちんと休む。その積み重ねが、暑い季節を健やかに過ごす力になるのではないでしょうか。
※このページの内容は2025年8月22日現在のものです。