排尿障害を考える~女性編【2・「間質性膀胱炎」「腹圧性尿失禁」】~
生活の質(QOL)に大きな影響を与える排尿障害(正式には「下部尿路機能障害」)。「過活動膀胱」に続き、女性に多い「間質性膀胱炎」や「腹圧性尿失禁」について、平尾病院の百瀬均名誉院長に聞きました。
平尾病院・百瀬均名誉院長
QOLを障害する程度が大きい「間質性膀胱炎」
過活動膀胱に似た症状ですが、QOL疾患としてはより障害の程度が強い疾患です。症状としては、尿がたまると膀胱や膣、肛門のあたりに痛みが生じ、尿を出すと一時的に痛みは軽減します。
進行すると尿が少したまるだけで痛みが生じるため、早めに排尿しようとして、結果として頻尿になります。
膀胱炎にも似ていますが、膀胱炎は排尿時や排尿後に痛みを感じ、尿の検査をすれば白血球や細菌が検出されるので、比較的容易に原因が分かります。間質性膀胱炎は、検査をしても異常が見つからないことが多く、原因も分かっていないため、これまで心因性の病気とされてしまうこともありました。
現時点では有効な飲み薬はありません。治療法としては、麻酔を掛けた上で膀胱に水を入れて膨らませ、内視鏡を入れて観察する「膀胱水圧拡張術」という方法で、特徴的な所見が見られた場合に「間質性膀胱炎」と診断します。これを行うと多くの場合で症状が改善しますが、その後再発する場合もあります。なお新しい治療法も最近開発され、効果が期待されています。
尿がたまった時に痛みを感じたら、泌尿器科専門医の診察を受けることを勧めます。
女性特有の症状である「腹圧性尿失禁」
腹圧が掛かった時に尿が漏れる症状で、男性にはほとんど見られない女性特有の疾患です。尿道がゆるくなるために起こり、妊娠出産の回数が多い人に多く、その他にも肥満や加齢などが原因として考えられます。咳やくしゃみをした時など、ふとした時に経験がある人は多いのではないでしょうか。
QOL疾患ですので、ご自身が困っていなければ治療は必要ないのですが、年齢とともに症状が酷くなることはあっても良くなることはめったにありません。生活に不便を感じるのであれば、治療を受けることを勧めます。
治療法としては、骨盤底筋体操という方法もありますが、きっちりとした内容の運動をずっと継続しないと意味がありません。
もう一つの治療法は手術になりますが、比較的小さな手術で良好な効果が確認されています。尿道の下にテープを埋めて、腹圧がかかっても尿道をずれなくする方法です。2~3日の入院で可能で、1cmぐらいの傷跡が3か所残る程度の、負担の少ない手術です。
活動的な日常生活で困っている「今」に治すことが大切です。
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過活動膀胱と腹圧性尿失禁が重なっている場合もあり、正しく診断することによって正しい治療法を選択することができます。生活の中で困ったと感じたら、気軽に泌尿器科を受診してほしいと思います。
★より詳細については、奈良新聞デジタル(会員サイト)で公開中。こちらより。
【協力】
平尾病院
橿原市兵部町6-28
Tel:0744・24・4700
※このページの内容は2022年5月13日現在のものです。