漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.6「プレ更年期の方」へ
漢方理論をもとに女性の悩みに答えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は30歳代後半から40歳代の「プレ更年期」についてのお話です。
更年期は誰もが通る道 穏やかに過ごすために大切にしたいこと
更年期がどういうものか知っておくこと
「更年期」はいつくるのか?と、何か不調が起きるたびに意識してしまうという声も聞かれます。
体調を崩したり、老化の始まりといったネガティブなイメージが先行して、不安になってしまうこともあるかもしれませんね。
更年期を意識し始めたら、まずは、どういうものかを知っておくと、スムーズに受けとめられるのではないでしょうか。
ホルモンバランスが崩れて不快な症状も
医学的に、更年期症状は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量に関係しているとされます。
排卵がある期間はホルモン分泌も維持されますが、加齢とともに排卵が減ってくると、ホルモンの分泌が減り、ホルモンバランスが崩れることで自律神経などが乱れ、不快な症状が出てきます。
「生涯の分泌量はわずかティースプーン1杯程度」といわれる女性ホルモンですが、42歳を過ぎるころから分泌量は減少し、40代後半になると徐々に生理も不規則になっていきます。人によっては、生理が数カ月来なくなったり、極端に経血量が多くなったり出血が続くなどのトラブルもみられます。
女性の体は7年ごとに変化
古来から漢方では、女性の体の変化は7年ごとを基本にしており、42歳ごろからプレ更年期、49歳前後には閉経とともに更年期を迎えるとされてきました。
更年期障害の症状は、不規則・不安定で、のぼせ、発汗、肩こり、疲れやすさ、情緒不安定、不眠、粘膜の乾燥など個人差もあり、また、その日によっても異なることもあります。
更年期に入る前から安定した生理周期を維持
漢方的に更年期をうまく乗り切るには、更年期に入って不調が起こり始めてから対策を講じるのではなく、それ以前から安定した生理周期を維持しておくことがポイントです。
毎月の生理に必要な「血」は、妊娠、出産、授乳でも消耗しますから、血の材料となる栄養をしっかりとり、スムーズな流れを保つことが大切です。
食材では、補血作用のあるものとして、なつめ、クコの実、黒ごま、黒砂糖、にんじん、レバーなどもおすすめです。
「腎」を補い「肝(かん)」の働き守って
また、漢方特有の概念として「腎」というものがあります。
腎は生命エネルギーの源である「精」を蓄える臓器とされており、生命力や若々しさを表します。加齢のほか妊娠・出産などは腎精を大きく消耗するため、生理周期を維持するには腎を補うことが大切になってきます。
腎を補うとされる食材として、牡蠣、黒ごま、くるみ、山芋などもおすすめです。
特に更年期対策として重要になるのは、「肝(かん)」の働きです。肝は生理に関わる血を貯蔵し、自律神経の調整を担っており、腎と互いに協力し合う関係にあるため、どちらかが弱ると互いに弱ってしまいます。
生理不順だけでなく、更年期障害として自律神経系の不調が起こりやすいのは、肝の働きが関与しているためなのです。
肝を補う食材としては、レバー、黒豆、大豆、うなぎ、しじみ、きのこ類などがおすすめです。
年齢だけでなく、生活習慣の乱れなどからホルモンバランスや自律神経が乱れると、更年期障害のような症状が現れる場合もありますから、日々の生活の延長線上にあるということも忘れてはならないですね。
「男性更年期」も注目 腎精を消耗し過ぎず
更年期のイライラ、発汗などの不調は、女性だけではなく男性にも現れ、「男性更年期」も注目されています。女性のカラダに変化が訪れるのは7の倍数というなら、男性は8の倍数とされています。
男性も40代後半になると加齢によって腎が弱り、生命エネルギーの源である「精」を貯える機能の低下から、排尿の働きが衰え、徐々に体力や気力、性機能なども低下し、56歳からは足腰の弱り、精力減退など老化による症状が目立つようになり、精神的にも不安定になりやすく、不眠や鬱などの症状が現れることもあります。
男性は、体力や生命力に関わる「腎」の役割が大きいため、ストレス、生活習慣の乱れなどで腎精を消耗し過ぎないことも大切です。
自然に逆らわず、穏やかな更年期を迎えるために、今できることから生活習慣を整えていきたいですね。
「漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~」過去のお話はこちらから
※このページの内容は2022年6月17日現在のものです。