認知症とともに歩む【6】 認知症を予防するために～軽度認知障害（MCI）の早期発見と企業の取り組み～

　9月の「認知症月間」に合わせ、生駒市で市民フォーラム「認知症予防のカギはMCI（軽度認知障害）の早期発見にある」が開催されました。このフォーラムの企画面で協力していたのが、テクノロジーの視点で認知症予防に取り組むMOMOCI（ももち）です。フォーラムの前後には、最新型のロボットエクササイズ機器（試作品）も展示され、来場者が興味深く体験していました。

軽度認知障害は早期発見が大切

　フォーラムでは、京都府立医科大学大学院教授の成本迅さんによる、軽度認知障害についての講演が行われました。
　軽度認知障害とは、健常者と認知症の間に当たる段階で、以前に比べて軽い認知の低下があるものの、日常生活においては支障がない状態のことをいいます。症状は一時的なもので、元に戻る人もいれば、そのまま認知症に進む人、3年ほど同じ状態が続く人もいます。

　認知症も軽度認知障害も、年齢が上がるにつれて患者数は増えますが、若い年代ほど軽度認知障害の割合が高くなっています。この段階で再度予防に努めれば、認知症の発症を予防したり、時期を後ろに遅らせる可能性があるといいます。「だからこそ、軽度認知障害の早期発見が大切」（成本教授）。

　この予防段階を表すのに、フレイル（虚弱）という言葉があります。身体的、精神・心理的、社会的側面という３つの測面から、身体が弱くなっている状態のことをいいます。認知症やうつの発症にも大きく関係する重要な概念です。
　フレイルかどうかを判断するためには、①体重減少②疲労感③身体活動の低下④握力低下⑤歩行速度の低下があります。
　また、似た状況を表すサルコペニアという言葉があります。これは筋肉・筋力が低下している状況のこと。例えば、食欲が低下することで低栄養になると体重も減少してサルコペニアが起こり、基礎代謝量の低下に。またエネルギー消費量の低下につながり、さらに食欲を低下させるフレイルサイクルが起こります。
　運動と認知症が大きく関わっていることは分かってきており、予防が重要になります。
　フレイル対策のためには、筋力強化や転倒防止、バランスのとれた食事、うつ予防、循環器疾患の予防・治療、糖尿病の予防・治療が大切です。

　認知症も早期に診断することで治る場合もあります。また認知症のことを知って対応することで、生活に工夫をしたり、家族や友人とのつながりを保ったり、進行を遅らせる薬剤の服用ができるなどの対応を取ることもできます。
　「友人と物忘れ協定を作ることを勧めています」と成本さん。自分では変化に気付かないことも多く、何か変化に気付いたら、お互い教え合えるように周りの人と話しておくと良いそうです。

最新エクササイズ機器使い認知症予防に

　筋力の衰えが認知症に影響することから、MOMOCIが進めようとしているのが、在宅のトレーニング機器でエクササイズを使い、アプリと連携を取りながら健康を見守る健康増進プログラムです。
　この日は、MOMOCIの親会社であるSHIN‐JIGENが開発を進める2つのエクササイズ機器を展示し、体験会を行いました。
　在宅用小型デジタルウエイト式エクササイズロボット「CWG」は、独自のワイヤーアシスト技術によって、若い人から高齢者までウエイトを変えながらトレーニングができる設置型の機器です。家庭用に小型化し、機器の重さは16kgほどですが、最新のモーター技術を取り入れることで150kgまで負荷をかけることができ、トレーニングジムで行うようなトレーニングを30種類ほど自宅でできるそうです。

　もうひとつがリュックのように背負って、腕を曲げ伸ばししてエクササイズできるウェアラブルロボット「SHIN‐JIGEN MODEL UX」。手を握ることでセンサーが反応し、負荷がかかります。

　開発のきっかけは、コロナ禍で家にいる人が増え、在宅しながらトレーニングしたいという声が上がったことでした。「家から出る機会が減って、運動しないといけないと思っているけれどできていないという人に使ってもらえたら」とSHIN‐JIGEN CEOの藤本弘道さん（53）。またこれらの機器を使い、アプリと連動させて自身の認知度を知り、運動することを習慣化する伴走を行うというソフト面での開発を進めるMOMOCI CEOの福井啓子さん（41）は「サービス面で応えていきたい」と抱負を話します。
　商品は来年秋の実用化を目指し、体験会を重ねながら改良を進めているとのことです。

【メモ】
株式会社MOMOCI（ももち）
https://momoci.co.jp/