起立性調節障害との付き合い方ー不登校に向き合う

思春期の子どもに、「朝起きられない」「めまい」「頭痛」「立ちくらみ」などの症状が見られたとき、起立性調節障害(以下OD)を発症している可能性があります。症状だけを見ると、病気のように思えませんが「動きたい気持ちがあるのに、体が思うように動かない」状態で、子どもは非常に辛い思いをしていることもあります。
養護教諭の立場から、長年、不登校や起立性調節障害の子どもたちと向き合ってきた、奈良女子大学附属中等教育学校養護教諭の加島ゆう子さんに、日常の過ごし方や保護者の心構えについて聞きました。
《参考》
起立性調節障害について専門医に聞くー奈良新聞デジタル【思春期に多い『起立性調節障害』】
まずは小児科で診断を受けて
近年、「起立性調節障害」という言葉がやっと周知されてきたようですが、「なまけ」「努力不足」「やる気を出せばできる」など、まだまだ理解不足な人がいることも事実です。「様子が違うなと感じたら、まずは小児科や専門医を受診してください」と加島さん。きちんとした診断を受けることで、学校との話し合いもスムーズになります。
ODは、中学生に多いと聞きますが、加島先生によると高校生で発症する子も少なくないそうです。「高校では特に、出席日数や成績などがクリアできていないと進級もしくは卒業が難しくなります。担任の先生と話し合うためにも、専門医の診断は大切です」とのこと。
つながることが大切
ODの特徴の一つとして、午後になると比較的元気になります。その様子を見た保護者は「少しくらい遅刻しても、学校に行けば良いばいいのに、なぜ行こうとしないのか」と悩みます。子どもの体の心配と、学校に行けてないという現実との間で「私はどうすればいいのか」と自分を責めてしまいます。
また、子どもたちもとても真面目な子が多く「遅れて学校に行くくらいなら休む」と考えがちです。「保護者も子どもも1人で悩まず、まずはSOSを発信してください。学校にはスクールカウンセラーや養護教諭、教育相談担当者など相談できる人が必ずいます。いずれも、心と体の専門家です。遠慮せず、直接相談してみてください」と加島さん。
子どもの気持ちに共感する
学校を休み始めた子どもの姿を見て、保護者は「このまま不登校になったらどうしよう」「勉強が遅れたらどうしよう」「引きこもりになったらどうしよう」と不安を感じ、その気持ちを子どもに向け、厳しい言葉をかけてしまうことがあります。
親の気持ち以上に、ODの子どもたちは不安を抱えていることを忘れてはいけません。学校を休んでしまっている不安、勉強が遅れる不安、自分の体は元に戻らないかもしれないという不安など、きりがありません。
まずは、子どもの気持ちに共感する、または一緒に感じることが大切です。「あるODの子どもから“体中に鉛の塊がついているみたい”と聞きました。そんな状態で起きられるはずがないですよね。子どもは分かってもらえるだけで安心します。子どもが”しんどい”と言ったら”しんどいんだね。それは辛いね”と共感することから始めてください」とアドバイスをくれました。
保護者は子どもの伴走者
子どもたちは自分の進む道を一生懸命探しています。保護者は、その子どもの伴走者であることが大切です。子どもが立ち止まれば一緒に立ち止まって、横で支え、自分で進み始めるのを見守る立場であることを忘れないようにしましょう。
そのためには、保護者が追い詰められないことです。1人で抱え込まず、いろいろな人の話を聞き、自分や子どもの状況を話すようにしましょう。「子どもに保護者という伴走者がいるように、保護者にも必ず伴走者が必要です。恐れず諦めないでいろいろな人に相談し、信頼できる誰かとつながっ てください」とのこと。
ODは、成長とともに症状は治まる傾向にありますが、20代半ばでも完治に至らないこともあるそうです。ただ、年齢と共に体との付き合い方を分かってくるので、長い目で付き合うように心がけましょう。

◆「起立性調節障害」の理解と子どもの未来
2024年1月14日 13時30分~16時15分
奈良市教育総合センターはぐくみセンター9階大会議室(奈良市三条本町13-1)
参加無料
定員150人(先着順)
申し込みサイトはこちら
Tel:090・2597・7738(碓井)
※このページの内容は2023年12月15日現在のものです。