漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.30「低血圧」でお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は低血圧の悩みを持つ方に読んでいただきたいお話です。
日常的な問題でもある低血圧
朝起きづらい、なんとなく身体がだるい、すぐに疲れてしまうなど、病気ではないけれど他人には理解されにくく、場合によってはサボっているとかダラダラしていると誤解されて、辛い思いをご相談いただく場合があります。
「低血圧」は高血圧に比べると注目されにくいものかもしれませんが、休養をしっかりとっているのに、疲れ、だるさが抜けない原因の一つとして日常的な問題なのかもしれません。
低血圧とは明確な判定基準はないようですが、血圧が正常よりも低い状態(収縮期血圧100mmHg以下が目安)とされており、体質的要因とされる一次性低血圧(本態性低血圧)、病気や薬の影響で起こる二次性低血圧(症候性低血圧)、立ち上がったときや長時間立っているときにおこる起立性低血圧、食後に起こる食事性低血圧(食後低血圧)などに分類されます。
また、低血圧を伴う可能性がある疾患では、学童期から思春期に多い「起立性調節障害」のような自律神経の不調、40歳から50歳代の女性に多い「甲状腺機能低下症」のようなホルモンバランスの問題、「心筋梗塞・不整脈・肺塞栓症」など緊急性を要するものも挙げられます。
血圧は健康状態を示すバロメーター
血圧とは心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)のことですから、血流の良し悪しと血管の弾力や強度との関連が大切になります。
血流や血管の拡張収縮は、気温や生活習慣などの影響を受けやすく、少々の変動は自覚しにくいこともあります。季節の変わり目や、自律神経が不安定になりやすい時間帯などは注意しましょう。
「低血圧」は、体に力が入りにくい、気力が出ない、冷え症などの要因となります。
このような「血圧異常」は、明確な原因が特定しにくく、遺伝的な要因、偏食や過食など食事の不摂生、多忙や人間関係などのストレス、運動不足、過労といった慢性的な生活習慣の積み重ねによると考えられており、血糖異常や脂質異常とともに生活習慣病といわれています。
そういった意味で、血圧は健康状態を示すバロメーターなのです。
一般に、男性より女性に多くみられ、血流が弱いため全身の隅々まで栄養や潤いを行き渡らせることができず、さまざまな不調が起こりやすくなります。
【低血圧による不調】
立ちくらみ、めまい、朝起き不良、頭痛・頭重、倦怠感・疲労感、肩こり、動悸、胸痛・胸部圧迫感、失神発作、悪心など。
思い当たることはありませんか。
血圧が低くなりやすい方は、夜ふかしを控えて代謝を維持し、適度な運動で血行を促進。お風呂はシャワーで済ませずお湯につかって身体を温かく保つことも対策としておすすめです。
漢方養生も取り入れて自身に合った対策を
生活習慣の改善に加え、漢方の養生も取り入れてご自身に合った対策をとると効果的です。
低血圧に関わる体質として、栄養を作る「胃腸」、全身に行き渡る「血」、生命活動の源である「腎」、自律神経を調節する「肝」に着目します。
「脾虚(ひきょ)」(=胃腸が弱い)体質では、食欲不振や倦怠感、気力が不足しやすく、風邪をひきやすいなどエネルギー不足の症状がみられます。
「血虚(けっきょ)」(=血液量が足りない)体質では、めまい、立ちくらみ、抜け毛が多い、爪が割れるなど冷えや乾燥の症状がみられます。
「腎虚(じんきょ)」(=高齢者にみられる)になるにつれ、無気力、腰痛、夜間頻尿、耳鳴り、物忘れなどを伴います。
「肝鬱(かんうつ)」(=気のめぐりが滞る)の状態は、いわゆるストレスによる不調で、情緒不安定、不眠、のどの詰まり感などが起こります。
低血圧とともに現れる症状から、体質を知ることができます。
血圧は高くても低くても不調の原因となりますので、生活習慣を見直し、安定させることが健康維持につながります。
※このページの内容は2024年6月21日現在のものです。