漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.3「更年期障害」にお悩みの方へ

漢方理論をもとに、多くの相談に応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、女性の健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は、女性が必ず通る「更年期」についての悩みです。
はっきりとした原因がない不調として「不定愁訴」とも
最近、「更年期かも!?」が口癖になっていませんか。
女性の更年期は、閉経前後、成熟期から老年期へ変わっていく移行期間をさします。
更年期障害は、閉経に伴う卵巣機能の衰えにより、ホルモン系や自律神経系などの変調から、身体や精神面にさまざまな症状が現れます。
イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込み、やる気が出ない、不安感、のぼせ、ほてり、急に熱くなり発汗(ホットフラッシュ)、動悸、不眠、肩こり、頭痛など、はっきりとした原因がない不調として「不定愁訴」といわれます。
漢方で考える更年期障害の原因とは
①月経と更年期障害
女性の生理機能を支える「血」は、月経・妊娠・出産・授乳などで消耗し続け、卵巣機能の低下により女性ホルモンの分泌も減少期に入ると、バランスが崩れ、自律神経系にも影響し、身体面と精神面が絡んだような不定愁訴が起こりやすくなると考えられています。
昔から「血の道症」と表現されるように、月経、妊娠、出産、更年期など節目となる時期には女性ホルモンのバランスが大きく変動し、イライラや頭痛、めまい、肩こり、月経異常などトラブルが起こりやすくなることが知られていますが、このバランスの変動に大きな役割を果たすのが女性の「血」ということになります。
不足しがちな「血」を補う方法として、漢方薬では「補血薬」というものがあります。
②年齢と更年期障害
成長・発育・生殖をつかさどる「腎」の働きは、20歳代で充実期を迎え、卵巣機能や女性ホルモンも活発になり、30歳代後半から少しずつ低下し始めて更年期へ向かいます。
「腎」の機能の変化について、漢方では「女性の身体の節目は7の倍数で変化する」といわれてきました。 生命力の充実期を通過して、維持期までの過渡期は、自信があった体力や気力が減少し、特に「腎」の減退として、寝つきが悪い、短時間で目覚めてしまう、夜中に何度もトイレに起きる、老眼、耳が聞こえづらい、足腰の弱り、乾燥などの症状が現れます。
年齢とともに減少する生命エネルギーを補う方法として、漢方薬では「補腎薬」というものがあります。
③ストレスと更年期障害
自律神経の働きを整え、精神の安定をサポートする役割を担うものとして、「肝」があります。
ストレスなどにより、肝の巡りが悪くなると、気血の流れも停滞し「腎」に送られるエネルギーが不足して、さらに卵巣機能にも影響が及ぶという関係です。
「肝」の働きが停滞すると「血」の消耗も大きくなり、「腎虚」「血虚」の症状が出やすくなるのです。
いつも忙しい方、うまくストレスを発散できないタイプ、ひとりで抱え込みやすい方は、生活リズムの変化などがきっかけで張りつめていた緊張の糸が切れて、一気に体調を崩してしまうことがありますので、要注意です。
「肝」は、季節の影響を受けやすく、冬から春の激しい寒暖差によって自律神経が乱れ、肝の働きが低下してしまうと心身ともに疲れを感じやすくなります。
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また、春は新しい年度始めでもあり、家庭や仕事の環境変化によっても、自律神経のバランスを崩しやすく、春は更年期障害がつらくなりやすい季節ともいえます。
避けて通ることはできない期間ですが、ご自身の状態を受けとめ養生することで、穏やかに乗り切る方法を見つけましょう。
※このページの内容は2022年3月18日現在のものです。