漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.10「血の道」でお困りの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに答えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は「血の道」でお困りの方に読んでいただきたいお話です。
病気ではないが心や身体に起こる不快感=血の道症
「血の道」とは聞き慣れない人にはすぐにイメージしづらいかもしれませんが、漢方では婦人科特有の不調を「血の道症」と呼んでいます。
厚生労働省によると『月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のこと』と定義されています。
漢方では、女性の体調は7の倍数の年齢ごとに変化するといわれますが、初潮を迎えると月経として血液を排出したり、妊娠に備えて蓄えたり、それらには女性ホルモンがバランスをとりながら変化し、さらに年齢ごとに成熟し充実期を経て衰退していく、毎日、毎月、毎年……常に変化しています。その中で妊娠や出産という大きなイベントも加わってきます。
心身が不安定になるのも無理はありませんよね。
人によって症状や度合い、タイミングもさまざま
"血の道症"は女性ホルモンの分泌に伴い、思春期から閉経に至るまでの長期間にわたって現れ、さまざまなストレスがかかることでも症状がひどくなったり、生活環境によっても波があるのです。
"血の道症"とされる症状は、子宮内膜症や子宮筋腫のような具体的な病気を意味するのではなく、病気ではないけれど心や身体に起こる不快感というものがほとんどで、人によって症状も異なり、複数の不調が出たり、あれこれと変化する方もおられます。また不調の度合いもさまざまで、どのような時に起きるかもそれぞれです。
イライラ、気分の落ち込み、不安などの精神面。肩こり、のぼせ、動悸、頭痛、腰痛、冷えなど血行の問題。にきび、ふきでもの、ほてりなど肌トラブル。生理の周期や量での異常のほか、疲れやすさ、だるさ、のどの詰まり感、フワフワ感、ソワソワ感、ワクワク感、めまい、不眠、過食、吐き気など多岐にわたりますので、多少なりとも誰もが経験していることかもしれません。
時期によって、PMS(月経前症候群)やマタニティブルーや産後うつ、更年期障害という形で現れる場合もあります。
病院に行って検査を受けても異常がないことで、かえって原因探しに躍起になったり、辛さを我慢しているという声もきかれます。
五臓の「肝」のはたらきを整えること
漢方では、五臓の「肝(かん)」のはたらきを整えることがポイントです。
一つひとつの症状を追うのではなく、バランスの乱れの根本である臓腑のはたらきが安定すれば、そこから派生する表面的な不調も解消に向かうという考えです。
「肝」には自律神経やホルモンのバランス調整や月経調整などを担っているため、生理周期やホルモンバランスが感情面や精神面に影響したり、逆に強いストレスや緊張感が続くと生理が乱れたり気血水のめぐりに影響したりするのです。
①「気」のめぐりが関係する不調
「気」のめぐりが関係するものとして、精神面の不調があげられます。
生理前に情緒不安定、気分の浮き沈みが激しい、不安感、集中力がない、イライラ、強い眠気、胸やお腹の張り、寝つきが悪いなど。
要因としては、"肝気"のめぐりが停滞して、エネルギーの発散がうまくいかない、「気滞」にあると考えます。
予防や改善には、気持ちを落ち着かせて"肝気"のめぐりをスムーズにすることが大切です。
頑張り過ぎたり、生真面目で手を抜けない性格の人は、自分で自分を追い込み過ぎて常に余裕がない傾向にあるため、気分転換や仕事や生活のペースを少し調整したりしながら、無理せずにリラックスした時間を持つよう心がけてみましょう。
食材は、ミントやハーブや柑橘など香りの心地よいものを取り入れ、コーヒーなどカフェイン含有量の多いものを控えることもおすすめです。
②「血」のめぐりが関係する不調
「血」のめぐりが関係するものとして、生理や痛みなどの不調があげられます。
生理痛、生理不順、冷え、頭痛、肩こり、便秘、肌荒れ、のぼせなど。
要因としては、"肝気"のめぐりの不安定さから、瘀血(血のめぐりの停滞)を生じることにあると考えます。
予防や改善には、適度な運動やストレッチなどで"肝血"のめぐりをスムーズにすることが大切です。睡眠不足やストレス、不規則な生活も影響しますので注意したいです。
「血」の状態は食べ物との関連が強く、特に甘いものやアルコール、揚げ物や味付けの濃いもの、脂身などは控えたいものです。水分が不足すると血液も濃縮されドロドロになって、めぐりも悪くなるため、水分を多く含む野菜などもバランスよくとりましょう。
③「水」のめぐりが関係する不調
「水」のめぐりが関係するものとして、むくみがあげられます。
生理前のむくみ、胃がチャポチャポする、尿の出が悪い、体が重だるい、めまい、耳鳴り、やる気が出ない、軟便・下痢など。
要因としては、"肝気"の滞りから水分代謝に影響し、体内の"水はけ" がスムーズにいかないことにあると考えます。
予防や改善には、半身浴や運動などで少し汗をかいて水分代謝を活発にしたり、必要以上に水分や塩分を摂り過ぎないことも大切です。
食材では、気をめぐらせる作用のある豆類や、水分代謝を促進する冬瓜や大根など水気の多い野菜、お茶では、はとむぎ茶やプーアール茶などもおすすめです。
☆ ☆ ☆
「血の道症」は、なかなかやっかいなものですが、日々の生活の質を支えるための基本的なコンディションともいえます。
ひとりで悩まずに、相談したり理解してもらえるだけでも、楽になることもありますから我慢し過ぎず、うまく付き合っていきましょう。
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※このページの内容は2022年10月21日現在のものです。