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認知症とともに歩む【7】「認知症」の基礎知識 ~家族のための奈良認知症介護教室に参加して~

 「認知症介護」のためには知恵や知識が必要です。奈良県が「認知症の人と家族の会奈良支部」の協力のもと行っているのがこの介護教室です。今年で11期目を迎える全6回講座の第2回目は、高井病院の医師・原健二さんを講師に迎えて認知症についての基本知識の話。「認知症を正しく理解しましょう」と題して行われた講座の内容を紹介します。

 

高井病院脳神経内科部長 原健二さん

 

認知症の診断はデジタルではなくアナログ

 認知症の介護においては、正しい知識を持つことが大事です。接し方を知らないと感情が先走ってしまい、本人も家族も辛い思いをします。
 認知症とそうでない人の間には明確な線引きはなく、入学テストのように点数で決まるわけでもありません。認知症の診断はデジタルではなくアナログと言えます。症状はその時々の調子によっても変わります。画像診断(CTやMRI)も行ってほかの病気も調べて診断します。脳の萎縮も年齢を重ねれば誰にでも起こることであり、萎縮があるから認知症というわけでもありません。

 

認知症とは?

 認知症とは、今まで普通に生活していた人が、アルツハイマーなどの脳の中の病気が原因で考える力や判断力が落ち、もの忘れなどが起こる症状のことです。生活において周囲の人の手助けが必要となり、幻覚が起こるなど仕事を続けることが難しい状態になります。その状態が一時的ではなく続き、気持ちや心の問題でもありません。

 

認知症の原因となる主な4つの病気

 認知症の原因となる病気はたくさんありますが、4つの病気が原因の多くを占めています。

 

アルツハイマー病(=アルツハイマー型認知症)

 認知症の原因で一番多い病気です。
 脳の中にアミロイドβ(ベータ)タンパクという物質がたまり脳の機能が落ちます。考えたり覚えたりすることが難しくなり、判断力の低下やもの忘れが起こります。
 アミロイドは何十年もかけてたまるため、少しずつ認知機能が衰えてきます。原因は不明で、アミロイドがどこにどれだけたまったら発症するのかは十分には分かっていません。早く発見して早く治療することが求められます。

 

血管性認知症

 脳梗塞や脳出血を繰り返すことで、認知症の症状が出ます。脳のどの部分が損傷しているかで、記憶力には影響がなかったり、注意力が落ちるなどの症状が出ます。リハビリで良くなることもあります。大事なのは脳梗塞などを予防すること。2、3回起こっている人は要注意です。
 アルツハイマー病に次いで多く、2つの病気で認知症の原因のうち多くを占めます。

 

レビー小体型認知症

 ないものが見えたり、実際は起こっていないことが起こったと感じるような、幻覚が起こることが特徴。体の動きが落ち、パーキンソン病のような症状を伴うことから昔はパーキンソン病関連の病気に分類されていました。今は認知症のひとつとしてクローズアップされています。

 

前頭側頭型認知症

 もの忘れは目立たず、これまでおとなしかった人が物を壊したり、万引きするなど性格が変わったようになる行動障害がみられたりします。アルツハイマー病の人とは違った症状が特徴的です。ほかに、言葉がうまく出て来ないなどの症状がみられることもあります。

 

 この4種類が認知症の主な原因となります。また若年性認知症の問題があります。アルツハイマー病などが65歳までに発症すると、脳の中の変化や症状の進み方が高齢での発症の人と比べて早く進みます。高齢での発症の人は最期まで家族と生活することが可能なことも多いですが、若く発症するといろいろな症状が出てくるため、家庭での生活が困難となる場合もあります。

 

もの忘れだけではない認知症の症状

 まず、日常生活の中でもの忘れが起こります。エピソード記憶と言い、「どこかに行ったこと」「楽しかったこと」「食べたこと」などを忘れてしまいます。また「明日病院に行く」など、新しいことを覚えられなくなります。一方で「昔は大変だった」と昔のことはよく覚えています。
 症状はもの忘れだけではありません。
 脳の中のどこに損傷が起こるかで記憶障害、実行機能の低下、判断力の低下、視覚認知障害などが起こり、これを中核症状といいます。そのことが原因となって徘徊、興奮、幻視、妄想、発動性低下など、これまでになかった周辺症状が起こります。
 自身の父母が亡くなっていることや、自分自身もおじいちゃんおばあちゃんになっていることが分からなくなります。また、もの盗られ妄想などが起こりこれらを認知症の行動心理学的症候(BPSD)とも言います。
 認知症のもの忘れと、そうでない場合のもの忘れの違いは、例えば認知症の場合「ご飯を食べたこと」をすっかり全部忘れてしまいます。食後の薬を忘れたり、何を食べたかを忘れることは、認知症でなくても起こります。
 ふつうは今日の日付を忘れても、今の季節を忘れることはありませんが、認知症では季節や自分が今いる場所のことが分からなくなるなど、判断力や思考力が落ちて、生活に支障が出てきます。

 

認知症と間違える病気や状態

 認知症と似ていますが、違う病気の場合もあります。例えば、腎臓や肝臓が悪い場合も判断力が落ち、反応が鈍くなります。また新型コロナ感染症などで高熱が続いた場合や、急な入院で集中治療室で点滴やからだにチューブなどが入っている時など、せん妄(興奮や幻覚など)が生じることもありますが、健康な状態に戻って良くなるのであれば認知症ではありません。
 またうつ病の人も、認知症のような症状が出ることがあります。特に認知症の始まるころにうつ病の症状が出ることが多く、判断の難しいところです。
 軽い認知症の人が、環境の変化や薬の服用などで急に症状が進んでしまうこともあります。
 これまで加齢によるもの忘れは心配ないと言われていました。しかし、認知症とは言えない前段階を軽度認知機能障害(MCI)とよんで、現在開発が進められている薬もこの時期の症例に有効ではないかとの意見もあります。今後の検討が待たれます。

 

認知症の治療は薬よりどう接するかが大事

 新しい薬の開発も進んでいますが費用が高額であり、対象者も限られています。薬に期待するより、悪くなるきっかけを防ぐことの方が重要です。日常の生活において、ご飯をしっかり食べ、水分を取ること。熱中症やけがに気を付けること。家族や周囲の人との関わりも大切です。
 認知症の人の心理的特徴を知っておくと、関わり方も変えることができます。
 昔は何でもできた人が、最近になってできなくなることが増えて来ると、本人にも不安感や焦燥、いらだち、不安定感、疎外感、被害妄想などが起こります。
 関わり方としては、根気よく、安心感をもってもらえるように接すること。ペースを合わせ、分かりやすく説明すること。その人と良い関係性を保つことです。
 実際に認知症の人が2~3カ月に一度の診察に来た時、付き添ってきた家族は「前回よりこんなことができなくなった」と、できなくなったことばかり気にする傾向があります。できないことばかりではなく、その人が今できていること、保たれている機能を見つけて評価してあげることが大切です。

 

 ☆ ☆ ☆

 

 講座では、原医師の話の後、配偶者を介護する家族・親を介護する家族に分かれて、それぞれの現状や悩みを相談する場も設けられていました。
 原医師も話し合いの輪に入り、「認知症という診断をつけることにこだわらず、どういうふうに生活をサポートしていくかが大事」との話がありました。


【メモ】
「家族のための奈良認知症介護教室」は奈良県地域包括ケア推進室主催で開催。毎年9月から2月までの全6回。

運営・問い合わせは「認知症の人と家族の会奈良県支部」tel0742・41・1026

※このページの内容は2023年11月24日現在のものです。

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