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輝く女性の私ism~プラチナLIFEプロデューサー ・グレイス加余さん(62・奈良市)

サードライフを見据えたセカンドライフを

 

 自身の母を介護した経験から、人生のサードライフを考える必要があると感じたグレイス加余さん(本名:井上加代さん)。ユニバーサルデザインのファッションショーや、「人生は後半戦ほど面白い」をテーマに講演会を開くなど、介護の考え方を変える活動を行っています。

 

突然始まった介護 知識がないから怖い

 2年前、京都市内で一人暮らしをしていた母・君子さん(当時91歳)が転倒して入院。退院後も一人での生活は難しいと、突然加余さんの介護生活が始まりました。
 それまで38年間CAとして世界中を飛び回っていた加余さん。どれだけ飛行機に乗っていても怖いと思ったことがなかったのに、母の介護を前に「怖い」と感じました。どうして怖いのか考えると、介護について学んだことがなく、知識がないからだと気付きました。
 ちょうどCAを定年退職した時期。介護について学ぼうと、初任者研修や実務者研修資格を取得。おむつフィッター1級の取得も目指しています。

 

40年以上ぶりの同居 まずは地域と関わりを

 君子さんの退院後、最初は施設への入居を考えていました。一緒に旅行に行くなど仲は良いものの、高校を出てから別に暮らしていたため同居する選択肢はありませんでした。しかし、施設を見学に行った後、君子さんが「やっぱり嫌だ」と言ったことで一緒に住むことを決意。高の原の加余さんの自宅に迎えることになりました。
 そこで加余さんがまず行ったのは、地域のボランティア活動に参加することでした。加余さん自身、それまで働いていたため地域とのつながりがありません。そこで地域の活動に積極的に参加し、もうすぐ母が一緒に来るのでお願いしますと、君子さんがなじみやすい環境を作りました。

 

主たる介護者はかじを取り 周りを巻き込んで

 介護からは多くのことを学びました。まず介護の工夫があります。柵の代わりにベッドの周りに100円均一ショップで見つけたエアクッションを置いてみたり、入院中はお見舞いに生花の花束がダメと言われたらバルーンを贈りました。コロナ禍で面会できないため、交換日記をするなど、ダメなことをあきらめず考え方を変えてみました。そんな介護生活を明るくSNSで発信。すると「便のにおいがきつい」という書きこみに消臭方法を教えてくれるなど、アイデアを返してくれる人がたくさんいました。
 「自分の人生を楽しみながら介護する」が加余さんのモットー。介護中も趣味である海外旅行に行きました。そんな時は弟が泊まりに来て、デイサービスの迎えは近所の人が代わってくれました。「できる人がすれば良い」。主たる介護者がかじは取るものの「巻き込み型の介護」が大切と話します。

 

介護から学んだこと これから伝えたいこと

 2023年8月、君子さんは他界。2カ月は落ち込んだと言います。そんな中で至った考えが、「介護は親孝行ではなく、親がする最後の子育て」ということ。親が自分の老いる姿を見せながら、子にするべきことを教えていると感じました。
 健康寿命と平均寿命に10年ほどの差がある今、誰かの介助を必要として生きる時期(=サードライフ)は必ずやって来ます。しかし、できることなら見たくないと、考えることも避けられがちです。「今の40代、50代は輝いている。その先が大事。いつか自分も介護されるということを前提に、考え方を今の間に変えておく必要がある」と加余さん。どうしても暗くなりがちな介護される時期を明るくしたいといいます。
 加余さんはCAをしていた50歳の時、自分の姿勢が悪いことからウオーキング法を学び、機能解剖学も学んで独自のウオーキング法、Zen Breath Walkingを確立。そのウオーキングの講座や、「人生は後半戦ほど面白い」をテーマに、高齢化社会を輝かせるユニバーサルデザインのファッションショーも定期的に開催しています。君子さんも2019年にはモデルとして舞台に立ちました。そのファッションショーやウオーキングを手段として、サードライフを輝かせる方法を伝えたい。その思いで、講演活動を行っています。

 

2023年11月に開催された「京都プラチナコレクション」の様子。紙製車いすに乗った君子さんの写真も一緒に

 

 

10年後の自分は変えられる 介護が明るい世の中に

 介護の世界では「尊厳の自立」ということがうたわれますが、実際は「子どもに迷惑をかけたくない」と自分の意見や希望を言わない人が多くいます。CAとして世界の考え方に触れた加余さんは「自分の希望をはっきり言える日本人を作らないと」と感じています。
 「人生はりんごのようなもの」。どんどん実は減り、芯を残して人生は終わります。どんな芯を残したいか。イライラした自分。ニコニコした自分。どんな自分で終わるかを決めるのは自分自身です。10年後の自分は変えることができます。
 介護でも嫌なことや辛いことはあります。楽しい方、実になる方に考え方を変えて、周りの人を巻き込みながら一緒に楽しむ。そんな人が増えることで、介護がもっと明るく、認知症の人も普通に暮らせる世の中になることを、加余さんは願っています。

 

【メモ】
https://grace-style.jp/

※このページの内容は2024年1月26日現在のものです。

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