漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.5「疲れ」でお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに答えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は「疲れ」についてのお話です。日々の健康管理を見直してみませんか。
「疲れ方」は人それぞれ 対応も異なる
「疲れた」という言葉を聞いた(発した)時、どのような様子を連想しますか?
過度の運動などによる筋力面の疲れ、もともと体力が不足して元気が出ない意味での疲れ、ストレスなどによる精神面での疲労感など、同じ言葉で表現しても「疲れ方」も人それぞれで、生活の変化などによってもその時によって違う場合もあります。
「疲れに効く」というと何が思い浮かびますか?
疲れを感じたら本能的に何か助けになるものがないかと考えることになりますが、何を補うかを間違うと、さらに疲れを助長してしまうこともあります。
筋力面の疲れであれば、休養をとることで筋肉の疲労回復を優先するべきなのか、もっと鍛えて足りない筋力を高めるほうがいいのか、という選択があると思います。
また、「疲れ」は肉体的にも精神的にも起こりますので、どちらが中心となっているかによっても対応が異なります。
加えるか除去するかの見極めが大切
漢方の大原則に「補(ほ)」と「瀉(しゃ)」という考えがあります。
「疲れ」に対して、心身の働きを高めたり栄養成分を加えたりすることが必要なのか、ため込んでしまった老廃物や負担になっているものを除去することが必要なのか、という見極めが大切だということです。
この対応を間違うと真逆の働きかけをすることとなり、さらに悪化させてしまうことになりかねません。
世間には「補うもの」が圧倒的に多く、現代人は「疲れに良い」とされるものを摂り過ぎて消化不良状態かもしれません。その代表が生活習慣病です。栄養過多で血液が汚れ、内臓の機能を圧迫して、血圧や血糖や悪玉脂質が高騰し、腎臓も肝臓も悲鳴をあげています。
そのような状態でも「疲れ」を感じたら、さらに何かを補おうとしてサプリメントなどに目が行きがちの方も多いように感じます。
その「疲れ」は、身体か心か?何かを増やすことで解消するのか、取り除くべきなのか?によって対処法もまったく違ってきます。 内臓にはそれぞれ感情との関連も 漢方的には「思い悩み」は「お腹=胃腸」から発生すると考えます。「幸せホルモン」と言われる「セロトニン」は、99%が腸で作られるといわれます。 漢方の五臓六腑では、脾(胃腸系)の働きが弱ると「思い悩みやすい」と理論づけられています。
五臓(=内臓)には、それぞれに感情との関連があり(下記参照)、その人物の素性を理解する根拠としても重宝しますが、強すぎたり弱すぎたりするとバランスを崩して不調の要因となります。
肝⇒「怒」、心⇒「笑」、脾⇒「思」、肺⇒「悲」、腎⇒「恐」
神経質だったりストレスで悩み過ぎるタイプの人では、下痢と便秘を繰り返す過敏性腸症候群のような脾の病気に罹りやすい、というイメージはまさにこの理論に当てはまる現象かもしれませんね。
ちょっと思い当たる……という方は「お腹=胃腸」をいたわる生活を心がけてみてください。
今回は、当店へご相談にお越しくださるお客さまの傾向から、個人的に感じることをまとめてみました。日常の健康管理にお役に立てれば幸いです。
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※このページの内容は2022年5月20日現在のものです。