漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~vol.16「肌荒れ」にお悩みの方へ
漢方理論をもとに女性の悩みに応えてきた一陽館薬局のかしたに陽子さんに、健康を保つ秘訣を聞く連載企画。今回は「肌荒れ」に悩んでいる方に読んでいただきたいお話です。
漢方の考えを利用した「内面からの美肌づくり」
"美肌" といえば、どのような状態が思い浮かびますか?
なめらかさ、透明感、弾力など理想的な肌質をキープするために、入念にお手入れされる方も多いと思います。
コロナ禍でマスク着用時間が増えたことは、目立たせたくない部分を隠せる反面、常にマスクの接触面を擦り続けていることによるトラブルも見受けられます。
マスクフリーになっても、お肌にとっては過酷な環境が続くのかもしれません。
「皮膚は内臓の鏡」。ふと気づくとシミやシワ、くすみや毛穴が目立つようになり、忘れていたニキビ跡も浮かび出てきたりして、年齢とともに「肌年齢」も変化していきます。
年齢肌に対抗して、美容成分を含む化粧品やサプリメント、外的な処置やマッサージなども効果的かもしれませんが、今回は漢方の考えを利用した「内面からの美肌づくり」についてご紹介していきます。
「気・血・水」のバランスや五臓六腑の働き整えて
漢方では、体表面を覆う肌も身体の一部と考え、「気・血・水」のバランスや五臓六腑の働きから整えることを基本とします。
例えば、スイーツや激辛メニューを食べ過ぎると吹き出物が出たり、寝不足だとクマが顕著になったり、生理前になると肌が荒れたりする、というように、同じようにお手入れしていても、内臓に負担がかかったり、ホルモンバランスやストレスの影響を受けていることがわかります。
「食べ過ぎ」や「寝不足」など一時的な要因であれば、少し気をつければすぐに回復しますが、長期間無理が続くとダメージも定着してしまいますから、日頃から肌にはカラダ全体の調子が表れると意識してチェックしてみると健康管理にも役立ちます。
美肌のためには胃腸が健やかであること
肌荒れの本質は「脾」(=胃腸)にあります。
食事を口から摂取し消化吸収を担う胃や腸はそのまま外周をカバーする皮膚と一体ですから、当然、食事による刺激やストレスで胃や腸が荒れれば、同じように肌も荒れると考えられますし、便秘など老廃物をため込むと肌質も劣化してしまいます。
美肌づくりのためには、胃腸が健やかであることが大切なのです。
「脾」の調子が整ったならば、次は「気・血・水」を整えましょう。
「気」「血」「水」は、食事を消化し吸収することから生まれるエネルギー源です。「血(=漢方では「けつ」といいます)」は、「血色が良い、悪い」などに使われるように肌の色調に表れ、特に女性の場合は月経とのかかわりもあり、肌の外観を通して「血」の状態が見えている、と考えるとイメージしやすいかもしれません。
◎くすみ、しみ、くま が気になる方⇒「瘀血」タイプ
肌に透明感がないのは、「血」も透明感のある新鮮な状態でないという意味で、老廃物をため込んでドロドロした巡りが悪い様子の表れと考えられます。
血行も滞りがちで、末端が冷えやすく、しもやけができたり、日常的に肩こりや頭痛があり、常に重だるく、生理痛や便秘も起こりやすいタイプです。
対策としては、甘いもの、脂こいものを控え、食事は薄味を心がけ、運動をして血行をよくすると効果的です。
◎毛穴の開き、たるみが気になる方⇒「気虚」タイプ
毛穴の開閉力が低下し、緩んでいるために目立ちやすくなっていると考えられます。気温変化に応じて暑い時は毛穴を開いて発汗したり、毛穴を閉じて寒さから守るなど、バランス調整を行うのが「気」の役割ですが、体力低下や衰えによって維持力を担う「気」も不足してくるのです。
日常生活でも疲れやすく、気力が続かないタイプで、寒暖差に弱く、ストレスでお腹をこわしやすかったり、風邪をひきやすかったり、アレルギー体質も見受けられます。
対策としては、あまり頑張り過ぎず、気分転換などリラックスすることが大切です。食事は早食いや不規則にならないよう、よくかんで食べましょう。
◎肝斑(かんぱん)が気になる方⇒「肝血虚」タイプ
名のごとく漢方的にも「肝」が関係しています。「肝」は蔵血(=月経血を蓄える)と自律神経(=ホルモンバランス)にかかわる役割を担っていますので、妊娠、出産、更年期など、血の消耗が激しかったり、ホルモンバランスが大きく変動したりすると「肝」の働きが低下し、「肝」の調子を示す目から頬にかけて肝斑として表れると考えられます。
対策としては、肝血の充実がポイントになります。貧血や栄養不足にならないよう、また体力に余裕がない時は休養をとって充電することも大切です。イライラしたり、忙しすぎると肝血を消耗しますので、せっかちな性格の方は要注意です。
◎しわ、乾燥が気になる方⇒「陰虚」タイプ
「陰」とは気血水の「水」にあたり、水分や潤いといった血液以外の液体のことで、臓腑では主に「腎」の役割になります。
漢方でいう「腎」は、尿に関係するだけでなく、成長、発育、生殖、老化という生命活動の源となる「精」を支配しています。そのため加齢により腎の働きが弱ってくると体全体の保水力も低下、細胞そのものにも潤いがなくなり、水分補給しても蓄えられず尿として出ていってしまう、というわけです。
対策としては、「腎精」を養うために睡眠をしっかりとること。補う食材としてはきのこ類や黒豆、山芋、牡蠣、ナッツ類などもおすすめです。
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いつものお手入れに内面からの体質改善を加えると、体調もよくなり、より効果的にお肌を整えることも期待できます。
こちらでは一例として挙げていますので、詳しくは個別にご相談いただくことをおすすめします。
「漢方養生で日々健康~体質を知るともっと元気になれる~」過去のお話はこちらから
※このページの内容は2023年4月21日現在のものです。